成長できる日本の中小企業をどう支援していくか――望月晴文(東京中小企業投資育成株式会社社長)【佐藤優の頂上対決】

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身内以外に株を持たれたくない

佐藤 中小企業なら、どんな業種・業態でもいいのですか。

望月 最初は業種指定があり、製造業だけでした。基本的にものづくり支援です。製造業は工場など設備投資が必要ですから、資本が厚くないとうまく回らない。その後、サービス業に広げて、IT企業などにも投資できるようになり、いまはどんな業種にもできます。

佐藤 飲食業にも投資できる。

望月 風営法がらみのものは対象外ですが、飲食もやっています。いま製造業が5割、飲食や小売を含めたサービス業が2~3割で、IT関係が1割弱ですね。

佐藤 ちゃんと配当があるのですか。

望月 9割は配当があります。上場した会社も95社あります。弊社は会社として健全経営なんですよ。国からの出資金は、1985年に返し終わっています。

佐藤 上場益もあったんですね。

望月 ええ、基本的に上場したら、マーケットが支援するわけですから卒業です。ただ安定株主でいてほしいという要望もあって、保有し続けているところもあります。日本の中小企業の特徴は、同族会社、ファミリー企業が非常に多いことです。つまり他人に株を持たれることにすごく抵抗感がある。

佐藤 そこがベンチャーとは違う。

望月 ベンチャーの人たちは、創業時の仲間に株を持たせて上場し、キャピタルゲインを得ることで、お金持ちを目指す。でも私たちの投資先は、必ずしも上場をゴールとせず、事業を発展させたいの一心なんですね。いろんな人に株を持たれてしまうと、意思決定がしづらくなる。だから株を手放したくないという方も少なくない。

佐藤 保有期間に限度はあるのですか。

望月 期限を切って売却することはしません。これはアメリカ人などにはまず理解してもらえませんが、我々はずっと保有する。投資先がちゃんと経営している限りは、こちらから手放したいとは言わない。

佐藤 まさに安定株主ですね。

望月 「長期」安定株主です。20年から30年が162社、30年から50年が196社、50年以上が31社あります。

佐藤 それだけ長続きするわけですから、非常に優良な企業に投資しているともいえますね。

望月 素晴らしい会社がたくさんあります。欧米先進国と比べて日本経済はちょっと異質なんですよ。ともにグローバルな大企業がいろいろありますが、日本の製造業は中小企業が基幹的部分を支えている。例えば自動車産業なら1次、2次、3次、4次下請けくらいまでありますが、完成車メーカーの付加価値は20%ほどで、あとは下請けが作っています。

佐藤 下請けでも世界的な企業がありますね。

望月 これが伝統的なアメリカ企業のゼネラルモーターズなどになると、内製化しているわけです。

佐藤 つまり、日本は高い技術が社外にある。

望月 そこが日本の製造業の強みで、その中小企業が弾力的にさまざまなことに挑戦するから、大企業が成長できるという面がある。だから中小企業をゆるがせにしない政策が必要なんです。

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