米国が主導するロシア産エネルギー禁輸政策の急所 絶対手を付けられないモノがある

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米国の本音

 米国の原子力業界アナリストは「ロシアの濃縮ウランなしではやっていけない」と指摘しており、代替供給先を確保するためには数年以上かかるとの見方が一般的だ。ロシア産濃縮ウランの迅速な穴埋めは不可能だと言っても過言ではない。

 原子力発電は気候変動への懸念から再び注目されるようになっており、ロシアのウクライナ侵攻でその価値は一段と高まっている。

 衰えたとは言え、米国は55カ所に93の原子炉を擁する世界最大の原子力大国だ。発電量の約2割を原子力が占めている。

「脱炭素」に大きく舵を切った米国政府は既存の原子力発電所を利用し続ける方針を鮮明にしている(5月3日付日本経済新聞)。エネルギー省は国内で競争力を失った原子力発電所を支援する60億ドル規模の補助金制度の運用を開始した。

 米国政府としてはロシア産濃縮ウランの供給に支障が生ずるような事態はなんとしてでも避けたいというのが本音だろう。

 ロシア産の化石燃料からの脱却が急務となっているEUも天然ウランの約2割をロシアに依存している。英仏独などは自前でウランを濃縮できるが、東欧の旧ソ連製原発はロシア産燃料を使用しているケースが多いのが実情だ。

 原発燃料を含めたロシア産エネルギーからの脱却は、予想以上に大きな困難を伴うことになるのではないだろうか。

藤和彦
経済産業研究所コンサルティングフェロー。経歴は1960年名古屋生まれ、1984年通商産業省(現・経済産業省)入省、2003年から内閣官房に出向(内閣情報調査室内閣情報分析官)。

デイリー新潮編集部

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