審判がプレーを見ず当てずっぽうでジャッジ…「疑惑の判定」で監督がブチ切れた3つの試合

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「ホームラン!」をコールするも……

 4対1とリードしたヤクルトは8回、先頭のラミレスがバックスクリーンを直撃する当たりを放った。打球はフェンス上部に当たったあと、グラウンドに跳ね返ってきた。本塁打ではなかったにもかかわらず、小林毅二二塁塁審はグルグル手を回して「ホームラン!」をコールした。

 本塁打と思い込んだラミレスは、二塁を回ったところでスピードを緩めた。ところが、直後、センター・金城龍彦が返球するのを見て、「本塁打じゃなかったの?」と大慌てでダッシュしたが、時すでに遅し……。あえなく三塁タッチアウトになった。

 途中で梯子を外された形のラミレスは当然のように「インプレー中に手を回していたじゃないか」と激しく抗議した。だが、小林塁審は「私は本塁打だと判定しましたが、ほかの3人が『フェンスの上部に当たって跳ね返った』と言うので、打者走者はアウトとして再開します」といけしゃあしゃあ。

 まさに「そりゃ、ないよ!」である。若松勉監督も「ボールデッドじゃないのか?」と抗議したが、判定は覆らず、試合は7分間中断した。

 試合はヤクルトが勝利し、4連勝となったが、若松監督は「4連勝?そんな雰囲気じゃねえぞ。これなら(線審を加えて)6人制にしたほうがいい」と勝利のうれしさもどこへやら、大むくれだった。

「あって良かったリクエスト」

 クロスプレーの際に審判があさっての方角を見ていていたばかりでなく、アウトをセーフとジャッジする誤審騒動が起きたのが、19年4月21日の中日対ヤクルトである。

 1点を追うヤクルトは5回1死二塁、上田剛史が二飛に倒れた際に、二塁走者・雄平が飛び出してしまった。

 打球を処理した堂上直倫が、二塁ベースカバーのショート・京田陽太に送球した。タイミングはアウトに見え、併殺でスリーアウトチェンジと思われた。

 だが、二塁ベースに背を向けており、そのプレーを見ていなかった今岡諒平二塁塁審はなぜか「セーフ」とジャッジしてしまう。

 中日ベンチから与田剛監督が怒りの形相で飛び出し、口角泡を飛ばして抗議した。その後、リクエストを要求すると、問題の場面で、今岡塁審が一塁を向いている映像が大型スクリーンに映し出された。スタンドでは、スクリーンを指差して大笑いするファンの姿も見られ、コントさながらの茶番劇に……。当然、判定はアウトに覆り、併殺が成立した。

 VTR導入以前だったら、判定はセーフのままで、監督は退場なんて最悪の事態になっていたかもしれず、与田監督にとっては、まさに「あって良かったリクエスト」だった。

 NPBによれば、今岡塁審は二飛の打球判定の確認で一塁塁審にアイコンタクトしていて、クロスプレーの確認が遅れたという話だったが、プレーとは無関係のよそ見ではなかったとしても、当てずっぽうでジャッジを下すようなことは、けっしてあってはならない。なお、今岡塁審は19年のシーズンを最後にNPBの審判一覧表から名前が消えている。

久保田龍雄(くぼた・たつお)
1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新刊は電子書籍「プロ野球B級ニュース事件簿2021」上・下巻(野球文明叢書)

デイリー新潮編集部

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