「ウクライナが日本に感謝を示さない」と怒る日本人の心理 識者は「今後も同じ議論起こる」

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大統領は瀬戸際

 担当記者が言う。

「日本の国名が加わったからといって、世論が大喜びしたわけでもありません。結局、何のための抗議だったのでしょうか。抗議して感謝されるというのは順番が逆ですし、かなり恥ずかしいことだと思います」

 防衛大学名誉教授の佐瀬昌盛氏は、国際政治が専門だ。2007年には、当時、総理大臣だった安倍晋三氏(67)の私的諮問機関「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」の有識者委員を務めた。

 今回の問題は、日本の国際貢献や安全保障のあり方と関係がある。どう受け止めるべきか、取材を依頼した。

 佐瀨氏は「そもそも今のウクライナに、100点満点の外交を求めること自体が間違っています」と言う。

「最近はCNNでウクライナ情勢を把握していますが、同局の報道を見ると、改めてゼレンスキー大統領が生きるか死ぬかの瀬戸際であることがよく分かります。大国ロシアが、いきなり侵略してきたのです。彼は軍事作戦の指揮だけで手一杯なのは明らかです」

文句より支援

 もし、これが平時であったなら、まずゼレンスキー大統領の側近がリストを作成しただろう。

 大統領は目を通し、「日本が入っていないじゃないか」と注意したかもしれない。

「しかし、今は非常時です。ゼレンスキー大統領(44)が感謝を表明する国のリストに目を通していなくても不思議ではありません。スタッフを非難することは可能かもしれませんが、彼らもロシア軍と生きるか死ぬかの戦いに臨んでいます。日本がリストに入っていないとあれこれ言うのは、ウクライナの現状について、あまりに理解が乏しいと言わざるを得ません」(同・佐瀨氏)

 佐瀨氏はゼレンスキー大統領の手腕を高く評価しているという。

「もしゼレンスキー氏以外の人物が大統領だったら、今ごろウクライナはロシアに屈服しているのではないかと思うほどです。NATO(北大西洋条約機構)の直接的な武力援助を得られなくても、ロシアに対して善戦しています。日本人は『支援したのに感謝されていない』と文句を言う暇があるのなら、『ウラジーミル・プーチン大統領(69)を倒すまで頑張ってください』と支援の姿勢を示すべきだと思います」(同・佐瀨氏)

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