西口文也、杉内俊哉、川上憲伸…「完全試合」を阻止した3人の“パーフェクト・スポイラー”を振り返る

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3度の“ノーヒットノーラン未遂”

 5月6日の中日対阪神で、中日・大野雄大が延長10回2死までパーフェクトに抑えながら、30人目の打者・佐藤輝明に初安打を許し、惜しくも快挙を逃した。“パーフェクト未遂”に終わった投手は、ファンの記憶に長く残るが、阻止した打者たちは、意外に忘れられがちだ。パーフェクト・スポイラーとなった男たちを振り返ってみよう。【久保田龍雄/ライター】

 中日・大野同様、延長10回に涙をのんだのが、計3度の“ノーヒットノーラン未遂”で知られる西武・西口文也である。阻止したのは、楽天の1番打者・沖原佳典だった。

 2005年8月27日の楽天戦、西口は140キロ台半ばの直球とスライダーを低めに集め、初回から1人の走者も許さない。0対0で迎えた9回2死、過去2回ノーヒットノーランを逃している“鬼門”と言うべき場面でも、藤井彰人を遊ゴロに打ち取り、9回をパーフェクトに抑え切った。

 その裏、西武が得点すれば、史上16人目の完全試合が達成されるところだったが、楽天のルーキー・一場靖弘も、2死から2人の走者を出しながらも踏ん張り、試合は延長戦に突入する。そして10回表、楽天の先頭打者として打席に立った沖原は、1回に右飛、4回に二ゴロ、7回には三振に打ち取られていた。

パーフェクト阻止打

「(西口は)良かったけど、何とかしないと思った。とにかくバットに当てることだけを心掛けていた」という沖原は、ファウルと見逃しで簡単に2ストライクと追い込まれたが、2球ボールのあと、カウント2-2から西口の124球目、外角スライダーをうまく合わせ、二塁右に打ち返した。片岡易之が必死にダイビングするも及ばず、打球は右前へ。この瞬間、西口の完全試合は幻と消えた。

 01年に28歳で阪神入りした沖原は、同じ遊撃手の鳥谷敬が入団すると、出番が激減。05年は、6月10日に前田忠節との交換トレードで、楽天の球団創設後、交換トレード第1号選手として移籍してきたばかりだった。

 つい2ヵ月前まで1軍出場わずか3試合だった“窓際”の33歳が、新天地で働き場所を得て、“パーフェクト阻止打”を放つ。トレードによって野球人生が好転した典型的なケースと言えるだろう。楽天移籍後、64試合に出場した沖原は、キャリアハイのシーズン83安打を記録している。

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