山口県阿武町「4630万円誤振込騒動」 知人が語る“ロン毛で無口”24歳ネコババ男の二面性

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「決して暗いわけではないのですが、自分のことは語りたがらない人でした。友達はいなさそうでした」。こう語るのは、山口県阿武町が誤って振り込んだ国の給付金4630万円の返還を拒否した後、忽然と姿を消した24歳男性Tの元同僚である。知人らは、男性が併せ持っていた二面性に驚いているという。

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事実上の「全国指名手配」

 4630万円もの大金を、みすみすたった一人の町民に奪われるという汚名を負った阿武町。全国から批難を受け続けてきたが、とうとう“反撃”を開始した。5月12日、町は全額の返還を求めて山口地裁萩支部に男性を提訴。これまで男性の素性について、警察が捜査中などの理由で一切明かしてこなかったが、一転、町民に対する説明文書に、男性の氏名と住所を掲載。ホームページにもアップした。

 この発達したネット社会において、その行為は“全国指名手配”に等しい。現に数時間後には、人気YouTuberが文書をそのままTwitterに転載し、Tの名前は一挙に全国に知れ渡った。

「やり過ぎではないかという声も一部にはありますが、町としても仕方ない面もあった。この間、町役場には『いったいネコババ男は誰なんだ』という問い合わせが殺到。無関係の人にまで疑念が向けられる混乱が起きていた。あるニュースサイトが、別人を“疑惑の移住者”として直撃取材をするなど、収拾がつかない状況になっていたのです」(地元記者)

母親でも説得できなかった

 提訴の公表とともに明らかになったのが、Tの不可思議かつ大胆不敵な行動だった。4月8日に誤振込が起きてから、21日にTが「お金はすでに動かした。もう戻せない」と告白するまでの二週間、町は再三に渡ってTに返還を頼んでいた。

 初日には職員がT宅を訪ね、Tの銀行口座がある阿武町から数十キロ離れた銀行支店に、組戻し手続きをしてもらうため同行。だがTは、銀行支店の玄関先で、「今日は手続きはしない。後日、公文書を郵送してくれ」と翻意したという。

 それから、Tはのらりくらりと逃げ続けた。その間、町はTの母親や弁護士にも接触し、粘り強く交渉。15日には弁護士から「近日中に母親立ち会いのもと、本人が組戻し手続きを行う」との連絡を受けていた。だが、実はその間、Tはカード決済などで毎日のように多額の現金を引き出したり、他の口座に移動していたのである。わずか2週間で、4630万円あった口座は“ほぼ空っぽ”になってしまった。

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