ヒットラーを激怒させた米「レンドリース法」復活へ 追い詰められたプーチンが最悪の決断も

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武器貸与でロシアへのメッセージ

「米国はロシア側の核兵器使用の脅しを無視してウクライナ支援を強化し、ロシア側の限界を試そうとしている」との懸念が生じている(5月1日付AFP)中、筆者が危惧するのは米国で「レンドリース(武器貸与)法」の復活が秒読み段階にあることだ。

 4月28日、米連邦議会下院は賛成多数で「ウクライナ民主主義防衛武器貸与法案」を可決した。法案は既に上院を通過しており、バイデン大統領の署名を経て成立する。

 武器貸与法は、安全保障上重要と認めた国へ手厚い支援を行えるようにするための法律だ。この法律はそもそも第2次世界大戦当初、欧州でナチス・ドイツと戦っていた英国やソ連を支援すべく武器や弾薬などを供給するために策定されたものだ。

 この法律は1939年9月の第2次世界大戦勃発から1年半経過した1941年3月に成立し、米国は1941年から45年にかけて、英国、ソ連などの連合国に対して総額501億ドル(現在の価値に換算すると7000億ドル以上)の軍事物資を供給した(そのうち113億ドル分はソ連に提供された)。この法律による支援が連合国の勝利に大きく寄与したというのが定説だ。

 バイデン政権はこれまでもウクライナに対して大規模な武器供与を行ってきたが、武器貸与法が復活すれば、支援の際に障壁となっていた様々な手続きが不要となり、従来に比べて迅速かつ大胆な支援が可能となるとされている。

 それ以上に重要なのは、この法律の復活が「米国によるウクライナ支援の本気度がこれまで以上に高まる」とのメッセージをロシア側に発することだ。

 前回の武器貸与法で主敵とされたドイツのヒットラーは「米国は武器貸与法によって援助する諸国の支配権を持とうとしている」と激怒、米国との開戦を決意したと言われている。今回のターゲットとされたプーチン大統領も「今回の動きは看過できない」と判断し、米国との軍事衝突を決意する可能性は排除できない。

 欧州歴訪中の岸田総理と会談したフランシスコ教皇は5月3日付のイタリア紙のインタビューで「1936年からのスペイン内戦が泥沼化する要因となった」という理由でウクライナへの武器支援を批判した。第3次世界大戦を回避するため、国際社会は西側諸国の武器供与についてもっと監視の目を強化すべきではないだろうか。

藤和彦
経済産業研究所コンサルティングフェロー。経歴は1960年名古屋生まれ、1984年通商産業省(現・経済産業省)入省、2003年から内閣官房に出向(内閣情報調査室内閣情報分析官)。

デイリー新潮編集部

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