ヒットラーを激怒させた米「レンドリース法」復活へ 追い詰められたプーチンが最悪の決断も

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 ロシアのウクライナ侵攻に対して、米国のバイデン政権は過去最強の経済制裁で応じたが、これまでのところ当初期待したほどの成果は上がっていない。

 冷戦終結以降、米国は「ならず者国家」と呼ぶ国々(北朝鮮、イラン、イラク、リビアなど)に対し経済制裁を実施してきたが、経済制裁のみで政権転覆など外交安全保障上の目的を達成できたことはなく、相手が大国であるロシアであればなおさらのことだ。

 このため、バイデン政権は武器供与へと戦略の重心を大きくシフトしつつある。

 ロシアによるウクライナへの侵攻以来、米国はウクライナに対してこれまで合計74億ドルの武器を供与したと言われているが、バイデン政権は4月28日、さらに200億ドルの武器供与を行うことを決定した。

 ウクライナに大量の米国製兵器が供与されていることから、米国内の兵器の在庫が減少しており、軍事関係者は「自国の有事対応に支障が出る」と神経を尖らせ始めている。

 特に深刻なのは携行型対戦車ミサイル「ジャベリン」だ。バイデン政権は5500基以上のジャベリンをウクライナに供与するとしている。ジャベリンの米国内の在庫水準は3分の2にまで低下すると言われていた(4月27日付ニューズウィーク)。

 ウクライナには既にロシアの戦車1両に対して10基のジャベリンが配備されているが、ロシア軍がウクライナ東部での砲撃戦に注力していることから、ジャベリンの需要は今後も高まるばかりだ。

 ジャベリンを製造する米軍事産業大手「ロッキード・マーチン」は4月下旬「米国防総省からの指示がなくてもジャベリンの生産を増加させる」と述べたが、生産能力に限界があり、短期間での増産は困難なのが実情だ。

 バイデン大統領は5月3日、ロッキード・マーチンのアラバマ工場を訪問した。ジャベリンの生産を担当する約300人の従業員を「日本やナチス・ドイツと戦うための兵器を量産することで第2次世界大戦の形勢逆転に貢献した労働者」になぞらえた上で「あなたがたのおかげでウクライナの人々が自衛できるようになるとともに、米軍兵士をウクライナに送ってロシアとの第3次世界大戦となるリスクを冒さずに済んでいる」と強調した。

 だが、はたしてそうだろうか。

「西側諸国の武器供与によりウクライナ軍は早ければ5月下旬にロシア軍に対して攻勢に転じることができる」との観測が出ており(5月3日付日本経済新聞)、ロシアは西側諸国のウクライナへの武器供与にいらだちを強めている。

 フランスのマクロン大統領と5月3日に電話会談したロシアのプーチン大統領は「ウクライナ側は紛争終結に向けた協議に真剣に取り組んでいない」と非難し、西側諸国によるウクライナへの武器供与の停止を強く求めた。

 ウクライナでは4日までに欧米からの武器運搬に使われていた複数の鉄道施設がミサイルで破壊されたとの報道がある。欧米からのウクライナ東部への武器輸送ルートを断ち切るため、ロシア軍は東部以外のインフラ施設にも攻撃を加えていることが関係している。

 ロシアのショイグ国防相は5月4日、北大西洋条約機構(NATO)からウクライナに武器が渡る際の輸送手段は「すべて破壊する対象になる」と警告を発した。

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