グローバル化が生んだ「エリートと庶民の分断」 経済的移民の受け入れは本当に人道的なのか

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強大なステークホルダーと化したグローバル企業と投資家

 グローバル化から連想される「国境なき世界」というと響きが良いかもしれませんが、麗しいものでないことは現実が物語っています。まず何よりも、世界がひとつになるという普遍的な響きを持ったグローバル化は、それとは逆に分断をもたらしました。

 グローバル化は、国境を含めたあらゆる規制を疎(うと)んじる新自由主義を背景にしています。そこでは当然、世界を自由に行き来できる余裕のあるグローバルな企業や投資家が力を持つ。そして彼らは、自分たちが動きやすいように、規制のさらなる撤廃を求めます。「法人税を下げろ。さもなくば、おたくの国からは出ていく」、あるいは「正社員の権利が法的に強すぎて解雇がしにくい国には、雇用コストが高いので投資はしない」といった具合に。

 強大なステークホルダーと化したグローバルな企業や投資家からのこのような一種の脅しに、各国の政府はその強大さゆえ屈せざるを得ない。結果、何が起きたか。

庶民の声が政治に反映されないように

 グローバルな企業や投資家が政治的影響力を強めた反面で、相対的に各国の「普通の人々」、一般庶民の声が政治に反映されにくくなってしまいました。前者に非常に有利な制度やルールが作られ、一般庶民が不利になる状況が生み出されたのです。具体的にはグローバルな企業や投資家が利益を得る法人税の減税、それに対して一般庶民の負担となる消費税の増税、そして非正規雇用率の上昇といった現象です。

 法人税を上げるとグローバルな企業や投資家はその国から逃げていってしまいますが、一般庶民は消費税が上がったからといって逃げない、いや逃げられない。こうして、各国の政府はグローバルな企業や投資家の声に重きを置き、引きずられることになっていきました。つまり、その響きの良さとは裏腹に、グローバリズムは、グローバルな企業や投資家と一般庶民の間に分断、格差の拡大をもたらしたのです。

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