高齢者は免許返納しない方がいい? “弱い高齢者”にならない秘訣を専門家が伝授

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高齢者ほど個人差が大きい

 最初に、高齢者は個人差が非常に大きいということを認識しておいてください。それが考えられていないから、「人生100年時代」の構想が、机上の空論になってしまうのです。

 現在、65歳以上の高齢者は日本の全人口の29%ほどを占めますが、一口に「高齢者」と呼んでも、30代や40代と変わらないほど元気な65歳から、寝たきりの100歳まで実に幅広い。年代ごとに、またタイプ別にも、気を付けるべきことは変わってきます。

 そもそも高齢の世代では個人差が拡大します。たとえば10代や20代は、東大生と学力がビリのほうの若者をくらべても、知能指数はせいぜい75~130くらいの間に収まり、極端な開きはありません。ところが高齢者は、80歳をすぎても第一線で活躍している学者や経営者がいる一方で、70代でも認知症で息子の名前すらわからなくなっている人もいるなど、差が非常に大きいのです。

 体力に関しても同様で、50メートルを走ったとき、若者は速くて6秒程度、遅くても10秒を少し超えるくらいですが、高齢者は80代でも10秒程度で走れる人がいる一方で、歩くことさえできなくなっている人もいます。

 こうした個人差を無視し、高齢者を十把ひとからげにとらえることに、私は疑問を感じています。

強い高齢者、弱い高齢者の間にあるグレーゾーン

 実は、強い高齢者と弱い高齢者の間にグレーゾーンがあります。70代、80代の多くはここに属し、高齢者の半数程度はグレーゾーンに該当するのではないでしょうか。そして、元気にすごして買い物などにも不自由がなかった人が、あるきっかけで寝たきりの弱い高齢者になってしまうのが、グレーゾーンの特徴です。

 ですから「人生100年時代」を実り豊かにするためには、グレーゾーンの人たちを老け込ませないこと、つまり勝ち組に近づけることが大切です。

 グレーゾーンから転落する「きっかけ」は、身内の死や過度のがん治療、あるいは運転免許返納から、最近ではコロナ禍の過剰な自粛までさまざまですが、私自身、こうしたきっかけで、みるみるうちに衰える人を数多く見てきました。

 たとえば、元プロ野球監督の野村克也さんは、奥さんの沙知代さんが亡くなってから、すっかり元気を失ってしまいました。

 がんの手術も、体力が奪われて寝たきりになってしまう危険性が高いという点で、私は高齢の方が受けるのを勧めていません。胃がん患者が転移を恐れて、胃の大半を切除してしまったりすると、食事を通して十分な栄養を取ることもできなくなります。王貞治さんも、手術後は痩せて、かなり老け込んでしまい、次第に歩くのも困難になってきています。

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