白井球審よりひどい…「私に逆らうからストライクもボールになるんだ」と言い放った高校野球の審判

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主将が「伝書鳩」に

 この監督が話すように、捕手や打者が球審にストライクゾーンの確認をすることは決して珍しいことではない。特に、捕手の場合はその後に投手に要求するコースや高さを決めるうえでも、ゾーンの確認をすることは必要な行動である。

 そのための質問をしただけで、あからさまに相手チームとはゾーンを変え、挙句の果てに「逆らうからストライクもボールになるんだ」と発言するなどは“言語道断”と言えるだろう。

 練習試合後、相手校の監督からは謝罪されたが、相手校がある県内の公式戦でもジャッジする審判であるため、「強気な態度に出ることはできない」と話していたという。これはかなり極端な例ではあるが、アマチュア野球の現場では、明らかに一方が不利になるような判定を見かけるケースがあることは確かだ。

 また、高校野球では監督がベンチから出てはいけないというルールがあり、判定に対しての質問は主将が行うことになっているが、このことでスムーズにコミュニケーションが取れず、主将が「伝書鳩」のように何度も監督と審判の間を行き来している様子もよく見られる。

大事なのはコミュニケーション

 4月28日に行われた茨城県大会の常総学院対常磐大高戦。打球を追った常磐大高の二塁手と常総学院の一塁走者が交錯し、守備妨害で一塁走者がアウトという判定に対して、常総学院側が何度も質問し、約30分間中断するというシーンがあった。常総学院の主将が、「伝書鳩」となり、何度もベンチと審判の間を往復していた。このあたりのルールも見直しを検討すべきではないだろうか。

「大事なのはコミュニケーションだと思うんですよね。もちろん判定に対して抗議することがNGだということは理解しています。ただ、野球は他のスポーツと比べてもルールが複雑で、瞬時の判断で間違った判定をしてしまうこともある。その際におかしいと思った時に、質問や確認は、当然、必要だと思います。その時に、お互いが相手の話をしっかり聞いて相互に理解しようとすることが大切です。ましてや、学生野球は教育の一環と言っているわけですから、相手の主張を全く聞かないような審判の態度は改めるべきですよね」(前出の監督)

 今年の選抜高校野球、広陵対敦賀気比戦では、審判が誤審を認めるシーンがあり、それに対する称賛の声は非常に多かった。今後はこういった柔軟な姿勢もより重要になってくるのではないだろうか。審判も選手側も試合を円滑に進めるためにお互いを理解して建設的なコミュニケーションを図る。そのような仕組みを野球界全体で考えていく必要があるだろう。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮編集部

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