30年間賃金が上がらないのは誰のせい? 年収は韓国以下に…背景に「値上げヘイト」が

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雇用流動性の低さ

 以上は日本の企業に長年染みついた体質の問題だ。一朝一夕に解決するのはなかなか難しいが、問題はまだある。

「日本の雇用の流動性が低いことも、給料が上がらない大きな原因であると思います」

 と述べるのは、第一生命経済研究所の永濱利廣・首席エコノミスト。

 日本型雇用システムの特徴は、終身雇用、そして年功序列型の賃金といわれ、昭和の初期からこの国の労働市場を形作ってきたが、

「このシステムでは、企業には賃金を上げるインセンティブが十分に働きません」

 と、永濱氏が続ける。

「アメリカと比べるとわかりやすいのですが、日本では就職はイコール就社。新卒、総合職で正社員として入社すれば、普通は定年まで働くことができます。その代わり毎年横並びに近い形で昇給し、同期と比べ、そこまで給料に違いは生まれにくくなります。しかし、アメリカでは事情が異なり、どの会社に入るかではなく、どのような専門性を身に付けて、それをどこでいかすかということで、給料にかなりの差が出てきます。自分に力を付けてステップアップし、転職を繰り返すわけです」

アメリカで賃金引き上げが容易な理由

雇用慣習はすなわち、その国の歴史や文化の反映だ。国によって異なるのは当たり前で、どちらが正しい、素晴らしいというものではない。しかし、安定性はともかく、こと給料を上げるという点に関しては、アメリカ型に軍配が上がるようだ。

「人材が流動しない日本においては、企業の取る合理的行動はひとつです。解雇規制が厳しいため、一度会社のメンバーに入れてしまえば、解雇するのは難しい。また下方硬直性と言いますが、一度給料を上げてしまえば、下げることもまた難しくなります。そこで、将来に備えて賃金の上昇カーブをなだらかにするのです」

 対してアメリカは、

「雇用流動性が激しいため、給料が安いとどんどん人が別の企業に持っていかれてしまう。そのため、賃金を上げないと優秀な人材が手に入りにくくなります」

 日本の会社では、人件費は固定費。解雇してゼロにすることも、大幅に減額することも難しいので、企業はまずその確保に走る。一方のアメリカでは、人件費は流動費となる。企業の経営状態によって調整が可能だ。そのため、引き上げも容易になるのである。

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