30年間賃金が上がらないのは誰のせい? 年収は韓国以下に…背景に「値上げヘイト」が

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賃金は韓国以下に

 さらにショッキングなのは、90年には日本の遥か後塵を拝していた韓国が、この間、経済成長を遂げて平均賃金をおよそ2倍に増やし、日本を追い越してしまったことだ。まさに失われた30年といえる。

 最新の平均賃金に戻れば、日本はOECD加盟国の35カ国のうち22位と、もはや経済大国とは呼べないほどの惨状をさらしている。

 賃金が増えないのだから、消費も低迷するのは当然。長年、物価が上がらない「デフレ」状態に日本が据え置かれているのは周知の通りだ。千葉のディズニーリゾートのパークチケットが8千円ほどなのに対し、ロサンゼルスのそれは1万6千円ほど。マクドナルドのビッグマックの値段も日本が390円なのに対し、アメリカでは680円……と、ニッポンが、給料もモノの値段も安い「貧乏国」に転落しているのはまぎれもない事実なのである。

内部留保の蓄積

 この状況からいかに脱するべきか。岸田政権がそれを最重要課題に掲げているのは、冒頭で述べた通りだ。春闘に首を突っ込むのみならず、税制や補助金の改正など、さまざまな施策を検討している。

 日本人の勤勉さに陰りが見えているわけではないはずだ。はたらけどはたらけど、なぜ給料が上がらないのか。

「この30年間、日本企業の国際競争力が衰えてしまったことが大きな原因だと思います」

 と述べるのは、慶應義塾大学経済学部の小林慶一郎教授(マクロ経済学)である。

「バブル崩壊後、時代が求めていたのは大規模な設備投資が必要な製造業ではありませんでしたが、日本では産業転換がうまくいかなかった。ゼロ金利政策の影響で、企業がいくらでも資金を調達できることから、経営者がリスクを取ったり、冒険を行ったりする必要がなくなり、かつての花形産業が生き延びてしまったのです。将来、成長するという展望を持てなければ、どこの企業でも、大胆な賃上げにはとても踏み切ることはできません」

 それゆえ、企業は儲かっても、それを更なる投資や従業員の給与に回さず、いざという時のために備えて溜め込んできた。いわゆる「内部留保」である。

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