テレ東「メシ系ドラマ」に息切れ感が 「先生のおとりよせ」の設定にはひそかに期待

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 ドラマ枠を増やし、食いもの系多めで勝負に挑むテレ東。重視したいのは、強いキャラクターや新奇性のある設定、物語の面白さだ。若い女やおじさんがうまそうに食うだけでは、ドラマとして記憶には残らない。

 また、商品や店舗、企業の情報をただ垂れ流すだけなら、そのへんの「ラヴィット!」「ポップUP!」にでもやらせとけ。できれば「人間模様8割・メシ2割」で吸引力のあるドラマを作ってほしいのよね。「きのう何食べた?」のような黄金比の良作を求めてしまう。

 手を替え品を替え、食いもの系ドラマの可能性を追求し続けるテレ東も、今期はやや息切れというか、やっつけ感が。一杯の椀に載せる具を求めて生臭坊主が旅をする「しろめし修行僧」(寅さんと西遊記と裸の大将のミックス版みたいな)、地域限定の名物をシットコム仕立てで家族が紹介する「よだれもん家族」。そして、お取り寄せマニアの官能小説家と漫画家が目利きを競うと思しき展開の「先生のおとりよせ」である。

 いずれもキャスティングはよいのだが、パッとしない。紹介されるメシはもれなくすべてうまそうだけれど、ドラマとしては淘汰されるやつ。埋もれるやつ。

 それでも微かに期待しているのが「先生のおとりよせ」。注目は向井理と北村有起哉のキャラクターだ。出版業界には手土産上手が多く生息しているし、リアリティーもある。ということで、テレ東メシ系代表で俎上(そじょう)に載せよう。

 向井が演じるのは生真面目な人気官能小説家・榎村遥華。お取り寄せには並々ならぬこだわりがある。女性の趣味にも並々ならぬこだわりが。要は巨乳好き。巨乳美少女漫画が好きで、漫画家・中田みるくのファン。中田の自画像から巨乳美人を勝手に妄想していた。

 そんな榎村は出版社から中田とのコラボ企画の話を受け、早速手土産に逸品を用意。ところが、中田みるくは男性だった。北村有起哉演じる中田はフェミニン男子で、女王様にいじめられたい奴隷志向のドM。実は中田も榎村遥華のファン。お互いの作品や世界観を尊敬しあっているのに、初対面は最悪。想像とのギャップで、険悪な雰囲気に。

 交渉決裂と思いきや、あいさつにきた編集長(橋本マナミ)が、ふたりの理想形(無駄に肉感的な女王様系)だったため、コラボ企画は実現することに。しかもふたりは同じマンションのお隣同士だと判明。これから始まる仕事とお取り寄せと性的妄想のバトル、といったところ。ええと、合ってる?

 原作の漫画&小説を読むと、ドラマはセリフのエッジが削られて品よく整えられた感はある。あくまでお取り寄せがメイン、性的嗜好の表現は薄口に(向井と北村なら濃い口・特濃でもイケると思うんだけどな)。

 犬猿のふたりを雑に適当に放置しそうな編集者には増田有華と綾乃彩(編集者って放し飼いが基本よね)。ややねっとり干渉してきそうなのが管理人の財前直見と、配達員の神尾楓珠(ふうじゅ)だ。

 人間模様8割は望まないが、キャラクターとセリフの濃度は注視していこう。

吉田潮(よしだ・うしお)
テレビ評論家、ライター、イラストレーター。1972年生まれの千葉県人。編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。2010年より「週刊新潮」にて「TV ふうーん録」の連載を開始(※連載中)。主要なテレビドラマはほぼすべて視聴している。

週刊新潮 2022年4月28日号掲載