アゾフスタリ製鉄所の封鎖は不可能 ロシア兵を恐怖の渦に巻き込む地下要塞の実態

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製鉄所を攻撃しない理由

 テレ朝newsが21日に配信した、「マリウポリ制圧か 民間人の避難どうなる 現地『ロシア化』顕著に」と「『マリウポリ制圧に成功』製鉄所の攻撃中止も指示…プーチン氏の思惑は?専門家に聞く」の記事からも、プーチン大統領の発言を引用しよう。

《「計画されている工業施設への襲撃は目的にかなっていないと考える。中止を命じる」》

《「カタコンベのような所に入って地下に潜る必要はない。1匹のハエすら出られないように封鎖しなさい」》

《「これ以上の攻撃は得策ではない。中止を命じる。ロシア兵士や将校の命と健康を守らなければいけない。マリウポリの作戦は成功した。おめでとう」》

 プーチン大統領は「製鉄所は放っておけ」と命令したということなのだろうか。

 だが、アゾフスタリ製鉄所の地下が堅牢な要塞だと考えると、プーチン大統領の発言を額面通りに受け止めるわけにはいかない。軍事ジャーナリストが言う。

「第二次大戦後の冷戦下、東側諸国の一員としてとしてソ連と共に西側諸国と対峙していたウクライナは、核戦争などの非常事態に備え国内にシェルターを建設しました。アゾフスタリ製鉄所の地下空間は、その代表例です」

堅牢な地下要塞

 だが冷戦終結後、製鉄所の巨大な地下空間は“歴史の遺物”として、半ば忘れ去られていた。

 地下空間の価値が見直されたのは、2014年のクリミア危機だった。

「ロシアが大軍を率い、ウクライナの領土だったクリミア半島を実効支配しました。危機感を覚えたウクライナ政府は、アゾフスタリ製鉄所の地下空間に着目したのです。シェルターを再び使えるよう整備し、更に増築したのです」(同・軍事ジャーナリスト)

 どれだけ施設が充実しているのか――。読売新聞オンラインは4月19日、「マリウポリの製鉄所の下、ソ連時代に建設の『地下要塞』…診療所や武器庫にカフェも」の記事を配信した。

《マリウポリのアンドリューシチェンコ市長顧問は18日、SNSに製鉄所の地下の施設の見取り図を投稿した。見取り図には検査・診療所や園芸場、カフェ、居住空間などが描かれていた》

 精鋭部隊と言われる「アゾフ大隊」を中心とするウクライナ兵だけでなく、避難できなかったウクライナ国民が製鉄所に逃げ込む映像をご覧になった方は多いだろう。

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