「日本にロシア人スパイは80人」 捜査のプロが明かす“スパイの見分け方”とは?

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ボガチョンコフ事件

 結局、日本は諜報員がのさばる“スパイ天国”の汚名を甘受せざるをえないのか。

 思い出されるのは、GRU所属のボガチョンコフなるロシア海軍大佐が00年、海上自衛隊の3等海佐を籠絡し、機密情報を入手していた事件だ。3等海佐は密会場所の飲食店で逮捕されたのに、肝心の大佐は席を立ち、事情聴取にも応じず、そのまま離日したのである。

 勝丸氏が嘆息して言う。

「政府ができるのは、捜査情報を元に工作員を“ペルソナ・ノン・グラータ(好ましからざる人物)”に指定し、国外退去させるだけですが、簡単にはやれない。報復として、日本の外交官が国外追放されかねないからです。もっとも、昨今、欧米各国は相当数の“外交官”を退去処分にしている。我が国も誰が諜報員かは把握しています。退去を言い渡すことくらい、本来はすぐにでもできるはずです」

失敗したスパイはどうなるのか

 実際、つい先日、日本政府もロシア大使館の職員ら8名に退去通告をした。その者たちが、警視庁の監視対象だったというのは専門家も一致するところだ。

「退去を通告された場合、通知から48時間以内に出国しなければ、外交特権がなくなり逮捕されます。ただし、大体の場合、外務省が大使館にそれを伝えた時点で、彼らは帰国のために荷造りを始める。そして1日か2日で成田から旅立ってしまいます」

 だが、工作員たちも国外に逃亡したからといって、安泰というわけではない。

「ロシアに帰ってから、刑務所に入ったり、行方が分からなくなったりするんです。いずれにしても、酷い扱いを受けることは間違いありません。諜報活動はバレたらおしまい。彼らも、命がけなんですよ」

 失策したスパイは、故国においても、安住できない定めなのだという。

週刊新潮 2022年4月21日号掲載

特集「プーチン『ヒトラー化』の末路」より

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