仏大統領選 マクロン楽勝が一転…極右「ルペン」急上昇と伝統的大政党“惨敗”の背景

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「心は左に、財布は右に」

 とはいえ、マスコミは、反ルペンの「偏向報道」を厭わないし、既存政党のアレルギーは強く、第1回投票で三位となったメランションも、前回決選投票での中立が不評だったので、棄権かマクロンという路線に変更するなど、ルペンがこれ以上、支持率を上昇させる兆しはいまのところない。

 だが、フランスには、「心は左に、財布は右に」というように、世論の風より投票行動は経済重視となることが多く、エネルギー価格上昇はルペンに追い風だ。そこで、マクロンはウクライナからの批判を聞き流し、支援強化を訴えるポーランド極右政権を「反ユダヤ主義者」だと罵るなど英米追従路線から距離をとって逃げ切りを図っている。

 万が一、ルペンが勝っても、現在、下院の議席は2パーセント以下なので、好き勝手はできない。ただ、今回、共和・社会・共産・環境という大政党が、第1回投票で投票率5パーセントを切って何億円もの供託金を没収されるなど弱体化している。

 フランスに限らず極右をいつまでも体制外にできるかといえば、イタリアではすでに政権参加しているし、スペインでもついに地方レベルでの政権参加が実現し、風向きは明らかに変わっているのが懸念されるところだ。

八幡和郎(やわた・かずお)
評論家。1951年滋賀県生まれ。東大法学部卒。通産省に入り、大臣官房情報管理課長、国土庁長官官房参事官などを歴任。徳島文理大学教授。著書に『365日でわかる世界史』『日本人ための英仏独三国志』『世界史が面白くなる首都誕生の謎』など。

デイリー新潮編集部

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