ロシア軍が使うドローン「オルラン10」のエンジンは日本製 意外にもゼロ戦の技術で開発

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マニア絶賛の技術力

「千葉県市川市に斎藤製作所という、ラジコン飛行機用のエンジンとしては世界トップクラスの技術力を誇るメーカーがあります。海外でもマニアなら『SAITO』を知らない人はいません。2014年に起きたクリミア危機でウクライナ軍はオルラン10を鹵獲(ろかく)し、そこで斎藤製作所のエンジンが使われていることが分かったのです。全世界のラジコンマニアの間でも話題になりました」(同・軍事ジャーナリスト)

 斎藤製作所のエンジンの性能を考えると、ロシア軍がドローンの動力として採用したのは当然だという。

「民生用ドローンの動力は電気ですが、これだと数十分しか飛べません。一方、斎藤製作所のエンジンを使えば、長時間の飛行が可能です」(同・軍事ジャーナリスト)

 東京の日本橋から静岡の沼津まで飛べる性能は、前に触れた通りだ。

「普通のラジコン用エンジンは『2サイクルエンジン』が多く、燃料は工業用アルコールです。ところが斎藤製作所のエンジンは『4サイクルエンジン』で、燃料はガソリンを使います。サイズこそ小さいですが、構造は基本的にゼロ戦のエンジンと同じです。『2サイクルエンジン』の音は甲高くてうるさいのですが、『4サイクルエンジン』は静かで、実際の飛行機のような排気音がします。そのためにマニアの間では人気があったのです」(同・軍事ジャーナリスト)

斎藤製作所の“DNA”

 斎藤製作所のエンジンは、高い静音性と低燃費を実現している。オルラン10が偵察用ドローンだということを考えると、この2点が高く評価された可能性はあるという。

 ちなみに、オルラン10の偵察用のカメラも、日本のキヤノン製品が使われているという。

「戦時中、ゼロ戦や隼(はやぶさ)、紫電改といった戦闘機を製造していたのは、飛行機メーカーの中島飛行機です。戦後、同社の技術者が自動車メーカーの富士重工業(現・SUBARU)に参画したのは有名な話ですが、斎藤製作所の創業者も同社のエンジン開発者です。斎藤製作所のエンジンにはゼロ戦の技術が継承されており、そのエンジンを使ったロシア製ドローンがウクライナの空を飛んでいるわけです。日本人としてはなかなか複雑な心境です」(同・軍事ジャーナリスト)

 斎藤製作所が4サイクルエンジンにこだわったのも、中島製作所から受け継いだ“DNA”を考えれば当然だろう。

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