尾崎豊“不審死”の8日前をキラー・カーンが回顧 「カレーを注文して“おいしいなぁ”と」

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 シンガーソングライターの尾崎豊が26歳の若さで急死してから今年で30年。

 薬物の過剰摂取によるともいわれたその死には、いまも多くの謎が残るものの、未発表音源を収録したライブアルバムの発売や写真展の開催など、伝説と化した人気は健在だ。その彼が生前、愛したのは元プロレスラー、キラー・カーン(75)の手になる特製カレー。命日となった平成4年4月25日の8日前にも頬張っていたという。

「最後に尾崎君が来たのは17日。フラッと一人でやって来て、ボトルキープしていたウイスキーを静かに飲んでいた。いま思い出しても、気さくな好青年という印象しかありませんね」

 と、キラー・カーンは懐かしそうに目を細める。

「当時、僕は都内で『スナック カンちゃん』を経営していましてね。店では2~3人のOLがアルバイトしていて、この日の尾崎君は彼女たちと雑談でもしていたかな。ほどなくカレーを注文して“おいしいなぁ”と言いながら食べていました」

 居酒屋とは違い、スナックで提供されるのは簡単なおつまみというのが一般的。

「もともとはアルバイト向けの賄い料理。でも、ある時、尾崎君が“お腹が空いているんですけど、何かないですか?”と言うので“カレーならありますが……”と言うと、“食べたいです”と。市販のルーに玉ねぎやにんじんなどの野菜のほか、野菜ジュースやリンゴジュース、すり下ろしたニンニクなんかを加えただけなんだけど、尾崎君はこれをいたく気に入ってくれたんですよ」

 その後は、来店するたびに注文を受けたという。

「うちの店では特別扱いせずに自然に接してあげよう」

 繁華街とは一線を画する、私鉄沿線のスナックに尾崎が心引かれたのはなぜか。

「尾崎君とのご縁は、彼と付き合いのあった自動車ディーラーが連れてきたのが最初。“日本のロック界のすごい人ですよ”って紹介されたんだけど、僕はピンとこなかった。でも、店の女の子は服を引っ張って僕を更衣室に引き入れると“マスター! あの人、尾崎豊でしょ!?”って聞くんです。“そうみたい”って答えたのを覚えていますが、この時、“うちの店では特別扱いせずに自然に接してあげよう”と決めたんです」

 そんな気遣いが伝わったのか、尾崎はちょくちょく顔を出すようになった。

「大きな店じゃないから、居合わせた一般のお客さんはすぐに気づく。でも写真撮影や握手を求める人はいなかった。ただ、たまたま店にポラロイドカメラがあって、客の一人が遠慮がちにお願いすると“いいですよ”って。2ショットを撮った後、尾崎君は僕にも“一緒に撮りましょうよ”って声を掛けてくれた。店で写真を撮ったのは、後にも先にもこの時だけでした」

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