ウクライナ侵攻のせいでドイツで暴動が起きるかもしれない

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先進諸国でも「暴動」の恐れ

 ドイツ政府の経済諮問委員の一人が4月に入り「ドイツで食糧危機が始まった」と発言したことにも驚いた。

 穀物の輸出大国であるロシアとウクライナが戦争状態になったことで世界の穀物価格は過去最高値を更新しており、ドイツでも3月から食料品価格がじりじりと上がり始めていた。欧州の経済大国であるドイツでも一部の食料品で買い占めの動きが出ていたが、4月第1週から大手スーパーが相次いで食料品価格を20~50%値上げするという異常事態になっている。

 インフレの高進は、当然のことながらドイツ経済に悪影響を及ぼす。

 ドイツ連邦経済省は3月中旬「インフレのせいで個人消費が冷え込む」との見方を示した。個人消費の動向を示す小売売上高の伸びは昨年後半からインフレ率を下回る状態が続いている。

 今年第1四半期から景気後退(リセッション)に陥っているドイツ経済だが、その屋台骨を担う自動車産業にも赤信号が点滅している。3月のドイツ国内の乗用車生産台数は前年比29%減と大幅に減少した。ロシアの侵攻の影響でウクライナからの自動車部品(電線を組み合わせたワイヤハーネスなど)の供給が滞っており、サプライチェーンの乱れは長期化すると見られている。

 今年のドイツ経済の成長率見通しが下方修正される中、気になるのは過去10年以上にわたり続いてきた不動産バブルの帰趨だ。コロナ禍で不動産バブルが世界各地で起きたが、その傾向が最も顕著なのはドイツ(特にフランクフルト市)だとの分析がある。

 ドイツ連邦銀行は4月6日「不動産市場が過熱しており、多額の債務を抱える不動産購入者への銀行融資を懸念している」と警告を発した。金融引き締めは間近に迫っており、ドイツ経済のハードランディングのリスクは高まっていると言わざるを得ない。

 エネルギーや食料価格の前代未聞の値上がりに加え、不動産バブルが崩壊して未曾有の不況に陥るようなことになれば、ドイツ国民の不満は爆発してしまうだろう。

 南米ペルーでは4月5日、エネルギーと食料価格が急騰したことに抗議する市民の一部が暴徒化したが、ドイツを始め先進諸国でも今後同じような暴動が起きる可能性があるのではないだろうか。

藤和彦
経済産業研究所コンサルティングフェロー。経歴は1960年名古屋生まれ、1984年通商産業省(現・経済産業省)入省、2003年から内閣官房に出向(内閣情報調査室内閣情報分析官)。

デイリー新潮編集部

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