「完全試合」佐々木朗希、“前人未到” 170キロはあるか?「野球動作解析スペシャリスト」に聞いた

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バレーボールのスパイク

 プロ入り3年目で開幕からローテーション入りしたロッテ・佐々木朗希。その進化が止まらない。今季初登板となった3月27日の楽天戦で、自己最速の164キロをマーク。続く4月3日の西武戦では、8回を投げて13個の三振を奪い、今季初勝利を飾った。西武戦で投じたストレートは70球。平均球速は159.5キロに達している。この数字はメジャーリーグでもトップクラスで、佐々木は、早くも「世界最高レベル」に近づいていると言って過言ではない。では、専門家は、佐々木のピッチングをどう分析しているのだろうか。【西尾典文/野球ライター】

 筑波大学の硬式野球部監督で、野球の動作解析の第一人者である川村卓准教授は、以下のように解説してくれた。

「佐々木投手の母校、大船渡高校の国保陽平監督が、筑波大野球部のOBという縁もあって、高校時代にピッチングを見せてもらいました。速いボールも投げられる投手は、体のあらゆる部分がしなやかに使えることが条件になります。佐々木投手の場合、特に背中部分の使い方が特徴的ですね。バレーボールのスパイクをイメージしてもらうとわかりやすいですが、背中から腕を上手く連動させて、ボールを加速させるタイミングが抜群に上手いです」

リリースポイントの高さ

 高校時代と現在の投げ方を比較すると、以前は下半身が下の方に潰れていたが、今ではこうした動きがなくなり、スムーズに腕が振れるようになったという。
川村卓准教授が続ける。

「(佐々木が)球が速いだけではなく、コントロールもいい理由は、腕や指先の感覚が鋭い点が大きいと思います。今年のピッチングは映像で見ました。あれだけの速さのボールをしっかりとコントロールができれば、プロのバッターでもなかなか打てないでしょうね。本当に凄いピッチャーになってきたと思います」

 佐々木の魅力といえば、剛速球のみならず、奪三振の多さがある。昨年のレギュラーシーズンの終盤から、今季初勝利を飾った西武戦まで、4試合連続で10個以上の三振を奪っている。なぜ、佐々木はこれほどの三振を奪えるのだろうか。川村准教授は「リリースポイントの高さ」が関係しているのではないかと指摘する。

「一般的に、体の前でボールをリリースした方がいいと言われていますが、佐々木投手は、かなり高い位置でボールを離しています。うちの学生が、同じ位置でリリースしたら、どのボールもキャッチャーが撮れないような高いところに行ってしまうのではないかと思ったほどです。(佐々木は190センチという)長身ですから、ボールを体の前方でリリースしなくても、ホームまでの距離は近い。しっかりとストライクゾーンに投げ込めば、かなりの角度が生まれます。バッターとしては、見たことがない高さからボールが来ることになりますね。これでは、ストレートとフォークの見分けが付かないでしょう」

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