ゼロコロナに固執で上海ロックダウンの惨状 半導体工場は世界不況の“時限爆弾”か

国際 中国

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白い防護服姿で殴り合い

「市内では大勢のボランティアらが白い防護服を着て、感染対策や食料配給といった支援を行っていますが、先日、防護服のボランティア同士が大通りで殴り合っている姿が目撃されたそうです。実はボランティアは“党と人民への奉仕”を誓い、志が高いはずの共産党員ばかり。そんな彼らでさえ、短期決戦と見られていた封鎖が長引き、終わりの見えない作業と重労働に疲労困憊し、ストレスフルの状態に置かれている証しと見られています」(前出・田代氏)

作業が終わるや、防護服を着たボランティアが道路に倒れるように突っ伏す姿も散見されているという。これから気温が上昇してくると、防護服での長時間作業は彼らの生命をも脅かしかねず、市民からは心配する声も上がっているそうだ。

「“ゼロコロナ”を掲げている以上、中国当局は陽性者がゼロになるまでPCR検査を繰り返し実施していく方針です。しかし、それでは検体の解析が追い付かず、検査会場でのクラスター発生リスクにも繋がる。実際、4月1日に行った1回目のPCR検査の検体数は1400万を超え、マンパワーも限界に達しつつあった。そのため上海市は3日、抗原検査キッドを各戸に配る方針に切り替えたのです」(同)

 市民が自らキットを使って検査し、陽性が出たらPCR検査を受けるという方針への転換は、当局が長期戦を見据えていることの表れとも見られている。

世界的な半導体不足の危機

 中国が世界有数の半導体消費国であるのと同時に、上海は国内の半導体産業の集積地として知られる。半導体を重点産業に位置付ける習政権の意向に沿って、半導体受託生産最大手のSMIC(中芯国際集成電路製造)は昨秋、約1兆円を投資して上海に新工場を建設すると表明したばかり。

「すでにSMICは上海に巨大工場を持っていますが、他にも市内には半導体の製造工場がたくさんある。そこで造られているのはTSMC(台湾積体電路製造)が製造しているような最先端の半導体ではなく、一世代あるいは二世代前のもの。ただ、電子機器は最先端のモノと旧型の半導体が混在する形で機能する仕組みとなっているため、上海製半導体の重要性に変わりはありません。つまり世界に向けた一大供給拠点となっている上海の半導体工場がストップすると、スマホやパソコン、そして自動車など世界中のメーカーの生産に直接影響を与えるのです」(同)

 コロナ禍以降、サプライチェーンの混乱で世界的な半導体不足が起きているが、上海の工場群が稼働を止めれば、トヨタをはじめとした各自動車メーカーやアップル、サムスンなど名だたる企業の経営を直撃する可能性があるというのだ。

「そうなれば、中国の経済成長も冷え込ませる一大事。だから上海当局は半導体工場だけは稼働させ続けるため、感染対策として工員を工場に寝泊まりさせる措置を取っています。とはいえ、工員らの疲労も限界に近づきつつあるといわれ、いまや綱渡りのような状況にある。ウクライナ危機以上に世界恐慌を誘発しかねないリスクを秘めた上海のロックダウンは、世界最大の“時限爆弾”のような存在となりつつあります」(同)

デイリー新潮編集部

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