近江・山田陽翔をスカウトはどう見たか? ドラフト候補、今年の高校生は目玉不在という声

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近江・山田投手の評価は…

 その他の投手では、優勝投手となった川原嗣貴(大阪桐蔭)、強打の花巻東を抑え込んだ米田天翼(市和歌山)、19イニング連続無失点の好投を見せた宮城誇南(浦和学院)などの活躍が目立った。しかし、今大会を象徴する投手といえば、近江を準優勝に導いた山田陽翔になるだろう。

 京都国際の出場辞退によって補欠校から急遽の出場となったものの、山田は1、回戦から準決勝までを1人で投げ抜き、大会最速タイとなる最速146キロをマークしている。準決勝では死球を受けて負傷しながら、延長11回まで投げ切る姿を見せた。

 ただ、山田を見るスカウト陣の目は少々厳しいようだ。セ・リーグ球団のあるスカウトは、彼の実力を以下のように分析している。

「昨年の秋は、肘を故障して投げられなかったにもかかわらず、選抜であれだけ見事なピッチングを見せたことは評価できます。山田は、どの場面で力をいれるべきかをわかっているし、投球術も上手い。ですが、プロの世界で勝負するとなると、何を武器するのかなという気がします。投手としては、体がそれほど大きくないし、今後、球速がアップするようなタイプにも見えません。強気のピッチングは魅力的ですが、球団によってだいぶ評価が分かれるような気がします」

目玉候補不在だからこそ

 どのスカウトに聞いても「今年の高校生には目玉候補が不在」という声が聞こえてくる。長年、ドラフト候補を取材している筆者もまた、同じ印象を受けている。だが、こういう状況だからこそ、スカウト陣は“やりがい”を感じているようだ。

「昨年のドラフトで指名された小園健太(市和歌山→DeNA1位)や風間球打(明桜→ソフトバンク1位)、森木大智(高知→阪神1位)などに比べると、今年の高校生は、選抜未出場の選手を含めても、彼らに匹敵するような素材はいないですね。あくまで現時点ですが……。ただ、最近は、平良海馬(西武)や戸郷翔征(巨人)、岡林勇希(中日)など、ドラフトで下位指名された高卒選手が意外に早く、一軍の戦力として出てくるケースもあります。目玉候補がいないと言われる年だからこそ、プロに入って一気に伸びる選手を見つけないといけないですね」(西日本担当スカウト)

 夏の地方大会、そして、夏の甲子園に向けて、スカウト陣が驚くような成長を見せる選手が出てくることを期待したい。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮編集部

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