36年続いた「ゆうゆうワイド」終了 ラジオの特性を熟知した大沢悠里さんの“気配り”とは

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 フリーアナウンサーの大沢悠里(81)がパーソナリティを務めるTBSラジオの名物長寿番組「大沢悠里のゆうゆうワイド土曜日版」が、3月26日をもって最終回を迎える。前身番組の開始から足掛け36年、リスナーだけでなく後輩パーソナリティからも敬愛され、皆が親しみを込めて「悠里さん」と呼ぶ。そんなラジオ界のレジェンドの足跡を振り返る。

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「ゆうゆうワイド」がスタートしたのは1986年。そもそもは平日午前8時半から午後1時までの4時間半の生ワイド番組として放送されていた。放送開始から30年の節目となる2016年4月に番組は一旦終了するが、続投を望むリスナーの声に応え、週1回・土曜午後の2時間番組として続いてきた。

 今年1月の放送で悠里さんは、「車の免許で返納もあるように、皆さんが心配しないうちにマイクを返納しようかなと考えている」と番組終了を伝えた。平日版と同じく土曜日版も、局側からではなく自ら降板の意向を申し出たという。悠里さんらしい引き際の美学だ。

 改めて悠里さんの経歴を紹介すると――。1941年、東京・浅草出身。64年、TBSにアナウンサーの第9期生として入社。久米宏は3期下、生島ヒロシは7期下の後輩だ。70年頃からラジオに主軸を移し、91年に同社退社後もその第一線で活躍してきた。

 過去にはテレビ番組のナレーションなども担当していたが、ここ40年ほどはテレビでの“顔出し”が一切ないので、「声は知っているが顔は知らない」という人も少なくないようだ。

 テレビに出ない理由については、「顔が知られると街を歩けなくなる。ラジオをやる人は街を歩かないとダメ。ネタが拾えなくなる」と悠里さんはいくつかのインタビューで話している。

ラジオの特性を熟知した“気配り”

 また、関東地区以外にお住まいの方も、あまり馴染みがないかもしれない。ラジオ番組の大半は、それぞれの地区でしか放送されていない地域密着メディアだ。関西地区だとMBSラジオの浜村淳(87)、中京地区だとCBCラジオのつボイノリオ(72)など、それぞれの地域のリスナーに愛されたラジオパーソナリティがいる。

 悠里さんも、関東地区の、なかでも年配のリスナーから愛されたレジェンドの一人だが、長年にわたり聴取率トップを続けてきた人気の秘訣は何か? 関係者は「ラジオの特性を熟知した“気配り”にある」と話す。

「ラジオは番組の途中から聴き始めると、いま誰が何について話しているのかがわかりにくい。しかし悠里さんは、話の端々で、ゲストの名前や話題にしている本のタイトル、さらには発売日や出版社名まで、何度も繰り返し伝えてくれるんです。問い合わせ先の電話番号を読み上げる時には、必ず『メモご用意ください』と言い添える。だから聴き逃しがないし、テレビとは違いじっくり話を聞いてくれるので、『ゆうゆうワイド』の宣伝効果は凄い、という驚きの声はよく聞きました」

 このような何気ない気配りは、全てが「リスナーの気持ち」に立って考え出されたものだ。先にも触れたように、悠里さんのファンの多くは高齢者で、70代や80代の方々の投稿も頻繁に取り上げられる。そのため悠里さんは、小難しくて意味が伝わりにくいカタカナ語はなるべく使わない。

 最終回を翌週に控えた19日の放送でも、「私は『リスナー』って言葉が嫌いなんだよね、『ラジオをお聴きの皆さん』なんだよ」と自らのこだわりを話していた。本稿では便宜上、リスナーという言葉を使っているのだが、いやはや、お恥ずかしい限り……。

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