ウクライナ「15歳ゴルフ少年」の悲痛な叫び「クラブハウスがロシア軍によって占領された」

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 ロシアによるウクライナ侵攻が続く中、ロシアやベラルーシを批判し、ウクライナを支援する声が世界各国から上がり、同様の声はスポーツのさまざまなフィールドからも次々に聞かれている。【ゴルフジャーナリスト/舩越園子】

ロシアとベラルーシの選手を排除

 ゴルフ界も例外ではない。欧州ゴルフの総本山である「R&A(ロイヤル・アンド・エンシェント・ゴルフ・クラブ・オブ・セント・アンドリュース)」は3月2日(米国時間)に声明を出し、ウクライナ侵攻に対する「制裁」を呼びかけたIOC(国際オリンピック委員会)とIGF(インターナショナル・ゴルフ・フェデレーション)に呼応する形で、ロシアとベラルーシからのゴルファーを全英オープンや全英女子オープン、全英アマチュアといったR&A主催のすべての競技から排除することを発表した。

 それらの大会の出場権を競い合う予選会、あるいは団体戦を含めた世界大会などからもロシアとベラルーシの選手は排除するが、この「制裁」の対象になる選手は、現状では「ゼロ」だ。そして今後、ロシアとベラルーシの選手からエントリーがあった場合は、「いかなる場合も拒絶する」という。

 さらにR&Aは、国際的なランキングシステムやハンディキャップのシステムもすべて見直し、そこにロシアとベラルーシの選手が含まれていた場合は排除することを決めた。それと同時に、ウクライナにある5つのゴルフクラブが所属しているウクライナ・ゴルフ・フェデレーションを「直接的に全力でサポートしていきたい」とR&Aは綴っていた。

 その声明を読んで、ウクライナにゴルフ場があること、ゴルフ連盟が構成されていることを「初めて知った」という人々は少なくなかっただろうと思う。

 というのも、ウクライナのゴルフ・ヒストリーは、まだ四半世紀ほどしかなく、世界にその名や存在を轟かせるレベルには至っていないからだ。

旧ソ連統治下、ゴルフは「敵のスポーツ」

 その昔、旧ソ連統治下にあったウクライナでは、ゴルフは「敵のスポーツ」と見なされ、禁止されていた。しかし、1991年にウクライナが独立してからは、ゴルフクラブを握る人々が少しずつ現れ、国内にゴルフ場も1つ、また1つと建設されていき、1997年にはウクライナ・ゴルフ連盟が創設された。

 とはいえ、当初のウクライナのゴルフは「金のかかるスポーツ」であり、ゴルフを楽しめるのは所得水準の高い人々、年齢層も高い人々ばかりだったという。だが、ウクライナ・ゴルフ連盟やナショナルチームを牽引する人々の年代が50歳代から40歳代、30歳代へと若返るにつれて、欧米ゴルフ界同様、「ジュニア育成が急務だ」と叫ばれるようになった。

 現在のウクライナのゴルフ人口は約4000人。今ではジュニア・ゴルフ・アカデミーも次々に創設され、未来のプロゴルファーを目指して、欧米の大会に挑むジュニアゴルファーやヤングゴルファーも出てきている。「ウクライナのゴルフ」の未来図がようやく明るく大きく描かれ始めていた。それなのに今、彼らの夢と未来が打ち砕かれようとしている。

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