ウクライナ危機で「ユニクロ」はなぜ失敗した? 危機管理の専門家が解説

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 ロシアのウクライナ侵攻を受け、各国の企業が撤退などの対応を迫られる中、日本企業の曖昧な態度は批判の的となっている。初期対応で大きなミスを犯した代表格が「ユニクロ」だが、危機管理の専門家で株式会社リスク・ヘッジの田中優介代表が考える、失敗の原因とは――。

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 ロシアによるウクライナ侵攻が始まって約1カ月が経過し、日本企業への影響も悪化の一途をたどっています。ロシアから従業員を帰国させたり、現地工場の稼働停止を発表する企業は増える一方ですが、その多くは「危機管理の原則」を理解していないと言わざるを得ません。結果、本来であれば間接的な“被害者”であるはずの日本企業に、国内外から批判の声が上がっているのです。

 たとえば、トヨタや日産、任天堂といったわが国を代表する大企業も、ロシアでの事業縮小や商品の出荷停止といった措置を講じています。各社がその理由として挙げるのは〈部品調達への支障〉や〈物流の混乱〉、〈社員の安全確保〉といった言葉です。しかし、それはあくまでも“自社都合”でしかありません。では、ウクライナでの騒乱が落ち着かなくても、部品さえ入手できれば工場を稼働させるのか、物流が安定したら即座に商品を出荷するのか。西側諸国から反感を買っているのは、こうした日本企業の曖昧な態度なのです。

ポイントは「公益」重視

 もし、私が危機管理のプロとして助言を求められたら、次のように発表するよう勧めたと思います。

〈さまざまな領土問題を抱えるわが国では、力による現状変更を容認していません。世界の公益を守り、企業の社会的責任を果たすためにも、事業を一旦凍結してから今後の対応を決めていく所存です〉

 ここで重要なポイントはふたつあります。

 まずは、企業としての私益ではなく、公益の観点を踏まえること。今回のように世界中を震撼させる“有事”が起こった場合、たとえ私企業であっても、国際社会のなかで社会的責任を果たす必要があります。

 この観点が抜け落ちているがゆえに、海外から「ショウ・ザ・フラッグ」と詰め寄られてしまう。米・ディズニー社は、今回の事態に際し、〈ウクライナ侵攻と悲劇的な人道危機を受け、ロシアでの劇場映画公開を見合わせる〉との声明を発表しました。日本企業との違いは明らかでしょう。

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