王者・大阪桐蔭に新星現る…“188センチの大型右腕”川原嗣貴が快投 4年ぶりの優勝へ好発進

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9回をわずか108球で

 痛打を浴びた富田は、大阪桐蔭打線について、こう話している。

「しっかり踏み込んで振ってくるバッターが多いので、キャッチャーの土肥(憲将)と話して内角を上手く使っていこうという対策をして、(試合に)臨みました。自分の手応えのあるボールでも、簡単に長打にしてしまうバッターが多く、打線の強さを感じました」

 自身の投球に点数をつけるとしたら「90点くらい」とも話していたが、結局この後は見事に立ち直り、自責点はこの2点だけだったことを考えても、谷口の一打が、いかに試合の流れを左右したのかがよく分かる。

 そして、大阪桐蔭にとって、忘れてはならない“勝利の立役者”は、先発のマウンドを任された川原嗣貴だ。9回をわずか108球で投げ切り、1失点で見事な完投勝利をあげた。昨秋の近畿大会で、チームの投手陣を牽引したのは、2年生サウスポーの前田悠伍だった。筆者は、今大会前に「デイリー新潮」で書いた展望記事では、大阪桐蔭の課題をこう指摘していた。

〈投手では、2年生の前田悠伍が昨秋に大きく成長し、その投球はとても下級生とは思えない完成度がある。(中略)大阪桐蔭が富田を攻めあぐねると、前田以外の投手陣に不安があることから、厳しい展開となることが予想される〉(2022年03月17日、デイリー新潮)

「どんな場面でも冷静に考えて」

“不安要素”のひとりと見ていた川原だったが、昨秋とは全く異なる姿を見せた。ストレートの球速は130キロ台中盤がアベレージだったにもかかわらず、鳴門打線に対して、ストレートの平均球速は140キロを超え、最速も144キロをマークした。このほか、緩急をつける緩いカーブ、決め球となるカットボールやフォークがしっかりとコントロールされ、常にストライクが先行するなど、安定感が抜群だった。

 川原と西谷監督は、この日のピッチングについて、以下のように振り返る。

「自分が最後まで投げる、自分がチームを勝たせるんだという気持ちで投げていました。(2回戦の近江戦で同点の場面から登板して負け投手になった)去年の夏は、厳しい場面で投げさせてもらって、その経験を生かしてと思って取り組んできました。ランナーが出てからや、ピンチの場面での粘りというのが、大事だと思うので、どんな場面でも冷静に考えて投げられるようにということを意識しています。今日は、目の前の打者一人一人を確実にアウトにして、最後まで投げられたことが良かったと思います」(川原)

「誰を先発にするか、ずっと見ていて、全員良い準備をしていましたけど、その中でも一番できていたのが川原だと思ったので、(先発に)決めました。ブルペンでもよく考えて投げていましたし、試合に合わせてのピーキング(コンディションを最高の状態にもっていく調整法)もこちらと話しながら、よく進めていたと思います。秋は、(近畿大会で)チームは勝ちましたけど、川原本人としては納得のいくピッチングがほとんどできなくて、下級生に負けられないという意地もあったと思いますし、努力を重ねていました」(西谷監督)

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