史上最短記録は来日から28日で…アッという間に帰国してしまった助っ人列伝

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「家族のホームシック」が理由

 コロナ禍の影響で来日が遅れていた新外国人選手も、3月13日に巨人の新外国人4人全員が入国するなど、チームへの合流が開幕ギリギリまでずれ込み、調整が困難を極めた昨季に比べると順調だといえる。しかし、彼らにとって“本当の勝負”は、シーズンが開幕してから。過去には開幕早々、さまざまな事情から志半ばで退団、帰国した助っ人たちも少なくない。【久保田龍雄/ライター】

「不動の4番」として及第点の結果を出しながら、家族のホームシックを理由に開幕から1ヵ月余りで帰国したのが、1984年に近鉄入りしたドン・マネーである。

 メジャー通算176本塁打と長打力が売りのマネーは、5月4日の日本ハム戦で蓑田浩二(阪急)と並ぶリーグトップの8号を放つなど、主砲の責任をはたしていたが、すでに4月下旬に退団を申し入れていた。

「家族のホームシック。それだけが理由だね。他の理由はない」(マネー)

 来日前、球団側が見せてくれた住居のパンフレットには、森に囲まれた新築のマンションの写真が掲載されていた。ところが、いざ入居してみると、マンションは中古で、壁紙がはがれており、絨毯も汚れていたうえに、壁の間からゴキブリがゾロゾロ這い出てきた。

“野球を終われ”という神のお告げ

 また、駐米スカウトの話では、神戸は人口4、5万人の街で、米国人ばかりなのですべて英語が通じるとのことだったが、これも事実ではなかった。近所に話し相手のいない夫人はノイローゼになり、カナディアンスクールに通っていた2人の子供も、終えるまでに一晩かかる難しい宿題に音を上げた。

 マネー自身も、試合の日は、日生球場なら1時間余り、藤井寺球場なら1時間半以上かけて電車を乗り継ぎ、重たい荷物を抱えながら、ほとんど立ったままの通勤に辟易していた。しかも、ロッカーなどの球場設備も劣悪で、観客も2、3000人程度。来日前にテレビで見た巨人戦の華やかさは、どこにもなかった。

 突然の退団申し入れに、球団側は庭付きの広い住居への移転、自宅から球場まで車での送迎など改善を約束し、慰留に努めたが、もう遅かった。

 マネーは「私は家族の気持ちを一番大事に思っている。向こうに帰っても、野球はやらない」と現役引退を宣言し、5月7日に退団を発表。そればかりでなく、もう一人の助っ人、リチャード・デュランも「マネーが帰るなら自分も」と同14日に帰国したことから、近鉄は2人の助っ人を一度に失う羽目になった。

 一方、97年に当時の球団史上最高額で大型契約を結び、阪神に入団したマイク・グリーンウェルは、自打球で右足首骨折後、「足のけがは“野球を終われ”という神のお告げだと感じた」の“名言”を残し、出場わずか7試合で5月14日に電撃退団している。

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