史上最短記録は来日から28日で…アッという間に帰国してしまった助っ人列伝

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震度7の地震にショック

「地震が怖い」という理由で、開幕から1ヵ月余りで退団帰国したのが、16年に楽天入りしたジョニー・ゴームズだ。

 メジャー通算162発の右の長距離砲は、日本の投手の変化球に対応できず、開幕から18試合で打率.169、1本塁打と不振にあえいだ。そんな矢先の4月25日、ゴームズは「家庭の事情」を理由に一時帰国したが、その後、球団側との話し合いが不調に終わり、5月6日に契約解除となった。

「退団して今後の野球人生を考えたいということでした。期待していたので残念」(安部井寛チーム統括部長)

 5月10日付のFOXスポーツ電子版によれば、ゴームズは「言葉の壁でチームメイトと話せなかったことが辛かった。地震も怖かった」と退団に至るまでの心情を吐露。ソフトバンク戦で福岡滞在中の4月14日に熊本地震が発生、同16日にも震度7の本震が発生したことで、大きなショックを受けたようだ。

 来日2ヵ月でまだ日本に慣れず、打撃不振で悩んでいる時期に、大地震に直面し、精神的に不安定な状態に陥ったにもかかわらず、周囲と満足にコミュニケーションが取れなかったのは、不運としか言いようがない。

 楽天は、14年に来日したメジャー通算150発のケビン・ユーキリスも、故障を理由に5月初めに帰国したまま退団しており、相次いでメジャーの長距離砲を開幕早々失ったのは、これまた不運な結末だった。

ストレス性の動悸を訴えて

 開幕早々どころか、まだオープン戦も始まっていない時期に、退団したのが、03年にロッテ入りしたロバート・ローズだ。

 横浜時代は99年に首位打者、打点王、最多安打の三冠に輝き、在籍8年で「3割以上7度」を記録した“横浜史上最強助っ人”は、2年間のブランクを経て、推定年俸8000万円でロッテに入団。自ら渡米して口説いた山本功児監督は「不動の4番・二塁。ローズと心中や」と期待をかけた。

 キャンプイン後、2月2日のフリー打撃で場外弾1発を含む柵越え15本とシャープなスイングを見せたローズだったが、13日から始まった紅白戦では、変化球に苦しみ、16日までの3試合で8打数無安打とサッパリ打てなかった。

 ストレス性の動悸を訴えたローズは、病院で精密検査を受けるため、17日に緊急帰京したが、すでに前日、変化球に対応できない動体視力の衰えを理由に退団を申し入れていた。

 球団側は冷却期間を設けようとしたが、ローズの気持ちは変わらず、19日、「野球をする情熱がなくなった。開幕前だとチームに迷惑がかかる」として1月22日の来日から「史上最短28日後」のスピード退団を発表した。

 横浜時代もモチベーションが保てなくなると、1度ならず引退を口にするほど思いつめていた“超真面目人間”は、日本でのラストシーズンをプレーすることなく帰国した。

久保田龍雄(くぼた・たつお)
1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新刊は電子書籍「プロ野球B級ニュース事件簿2021」上・下巻(野球文明叢書)

デイリー新潮編集部

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