玉川徹のウクライナに関する発言を検証 「個人の感情論といわざるをえない」の指摘も

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もっと大きな犠牲にも

 しかし、だからこそ声を上げることに価値があるのではないか。京都大学名誉教授の中西輝政氏は、

「プーチン擁護者の言論を理由に、彼らに不利益を与えたりすれば、ロシアと同じ社会になってしまう」

 と断りながら、言う。

「ロシア国民が表立ってプーチンを批判できないのは理解できるし、受ける罰を考えれば責められませんが、もう少し勇気をもってほしいと思うのも確かです」

 一方、この人は立場もなにもない。テレビ朝日「羽鳥慎一モーニングショー」で、コメンテーターで同局の玉川徹氏が、「ウクライナが退く以外に、市民の死者が増えていくのを止められない。死者が増えないようにすることも指導者の大きな責任」などと発言し、太平洋戦争で降伏を拒んだ日本軍まで引き合いに出したのだ。中西氏が指摘する。

「一刻も早く停戦し、これ以上犠牲を増やしたくないという感情はよく理解できますが、そのためにウクライナの完全譲歩を求めるのは個人の感情論といわざるをえません。今後の状況をよりよい方向に向わせるには、法の支配や道徳的要請も加味した両国の歩み寄りが必要です。太平洋戦争は大切な教訓で、いたずらに死者を増やすべきではありませんでしたが、犠牲があるから抵抗しないという姿勢が、もっと大きな犠牲につながることもある。第2次大戦中のユダヤ人迫害は、無抵抗に終始した結果がホロコーストにつながり、その反動が、いまのイスラエルの武力至上主義です」

 テリー伊藤氏も同様に発言し、ウクライナ人から「抵抗しなければ祖国がなくなる」との悲憤の反論を受けた。彼らにとって降伏は祖国の喪失を意味することに、思いを致すべきだろう。

週刊新潮 2022年3月24日号掲載

特集「プーチンの断末魔」より

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