【相棒】特命係から去る「冠城亘」は恋多き男…全138話を振り返る名場面集

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切ない恋の終わりと名シーン

 そして何より特徴的なのが、歴代相棒中、最も“恋多きキャラクター”である点だ。右京たち行きつけの小料理屋“花の里”の2代目女将だった月本幸子(鈴木杏樹)をたびたびデートに誘っている(ただし、当の幸子からは軽くあしらわれている)し、初登場したS14-1ではいきなり外国人女性にビンタを食らうシーンもあった。S14-最終話では、元公安調査官だった鴨志田慎子(高岡早紀)という女性とかつて一緒に暮らしていたことが明らかとなり、彼女の部屋で2人が会話する場面もあった。警察官の行方不明事件を追うジャーナリスト・若月詠子(伊藤歩)をデートに誘ったり(S15-10)、美人シェフの道上しおり(入山法子)がオーナーシェフを務めるイタリアンに足しげく通ったりしたこともあった(S15-12)。そして元カノの竹田ユキ(佐藤江梨子)が殺害されるという哀しい事件も起こっている(S18-5)。

 そんな冠城が最も大事に想った女性は、タコライスを作るキッチンカー店主・新崎芽依(朝倉あき)だろう。新崎はS16-9とS18-17と2度に渡って登場。初登場時はスナック店主の殺害事件の重要目撃者であった。だが人の顔が覚えられない、認識できない相貌失認という先天性の障害を抱えていた。そのことを知らない犯人は新崎を狙い、彼女を救うため素手で立ち向かった冠城は胸を刺されて負傷してしまう(つい最近放送されたS20-18でも、自らが盾となり左胸を刺されてしまったが、遡ること約4年前にも似たような状況があったわけだ)。入院中、2人はいい感じになっていたが、結局、彼女は実家に戻り、家族に障害のことを打ち明けて一度出直すことになる。

 2度目に登場したときは“ネコの耳”というキッチンカーで焼きたてパンを販売していたが、今度は彼女が行方不明になってしまう事件が発生。特命係を敵視する人物の差し金により、連続殺人犯に拉致監禁されていたのである。無事、救出したものの、冠城は彼女を危険にさらさないため、2度と近づかないことを決意するのであった。切ない恋の幕切れであった。

 最後は右京との関係性である。歴代の相棒たちとは違い、右京のキャラクターや異端児ぶりをからかったり、本人を前に不躾な発言をしたりして、右京を憮然とさせたりすることもあった。このような振る舞いからS14では冠城のことを“相棒”ではなく、“同居人”と呼んで一定の距離を保っていた。特命係への異動を経て、互いに協力して長年に亘り事件を解決していくうちに信頼関係が生まれ、冠城のことを“相棒”として認めるようになったのだ。

 そんな2人の絆が最も感じられたのが、S18-14・15の2話連続エピソードである。右京のロンドン時代の相棒だった南井十(伊武雅刀)が都内で連続殺人事件を引き起こすのだが、右京はその最後のターゲットが現在の相棒である冠城だと察知し、彼を守るために「特命係を辞めてもらえますか?」と懇願するのだ。それに対する冠城の答えは「俺たち警察官が屈したら、正義なんてどこにもない」と強く拒否。相棒のことを思う右京の優しさと正義を貫き通そうとする冠城の信念が交差したこのシーンは、冠城亘相棒の屈指の名場面といえよう。

 ついに卒業する冠城亘。その最後の勇姿を目に焼き付けたい。

上杉純也

デイリー新潮編集部

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