ロシアの外貨準備高が深刻なインフレをもたらす バイデン・ショックへの危惧

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 ロシア国債のクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)を購入する動きが活発化している。債務不履行(デフォルト)の際の保険の役割を果たす金融派生商品であるCDSの市場が活況を呈しているのは、欧米諸国の経済制裁を受けるロシアが国債の元本や利息を事前に約束した期日に支払えない事態に陥るとの観測が高まっているからだ。

 ドル建てのロシア国債は3月16日に1億ドル超の利息の支払日を迎える。猶予期間が30日間あるものの、4月15日までに支払わなければデフォルトとなる。3月31日に3億ドル超、4月4日には20億ドル超の元本償還も控えている。

 1998年にロシア国債がデフォルトした際、借金をしてまでロシア国債を大量に購入していた米国のヘッジファンドLTCMが破綻に追い込まれ、金融不安を引き起こした。

 現在のロシア政府の支払い能力ははるかに高いとされているが、経済制裁を科した欧米諸国への反発から、ドルやユーロなどの外貨建て国債の元利払いをロシア通貨ルーブルで行う方針だ。プーチン大統領は5日、日米欧などの「非友好国」に対する債務返済をルーブルで行うことを認める大統領令に署名した。ロシア中央銀行が定めた為替レートに相当する金額を支払えば、債務履行とみなされるとしているが、約束と異なる通貨での返済を格付け会社がデフォルトとみなす可能性が高い。

 2008年のリーマンショックの主要因の一つがCDSであったことから、ロシア国債のCDSの動向を警戒する向きもあるが、国際通貨基金(IMF)は13日「ロシアが対外債務でデフォルトを引き起こしても、世界的な金融危機をもたらすことはない」との見方を示した。海外投資家が保有する外貨建てロシア国債の残高が200億ドル程度であり、金融システムへの影響は限られるとの見方が一般的だからだ。

 国際銀行間通信協会(SWIFT)は12日「国境を越えた送金業務に必要となる同協会の情報システムからロシアの大手7銀行グループを排除した」と発表した。これにより排除されたロシアの銀行は国際的な送金を迅速に行うことが困難となる。欧米諸国の経済制裁による貿易制限のせいで経常収支などの悪化が見込まれることから、ロシア政府は海外への資金流出を防ぐ資本規制を強めており、現下のロシア経済は世界の金融市場から実質的に切り離されてしまったと言っても過言ではない。

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