ウクライナ侵略でいよいよ他人事ではなくなった… 沖縄・石垣市の市長選で考えた尖閣有事

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「陸自配備の住民投票」を公約にした新人候補は市長の元“同志”

 石垣市では平成30年(2018)7月に中山市長が陸自配備計画を正式に容認した。令和4年中に警備隊と対艦・対空ミサイル部隊が駐屯する予定とされ、宿舎の建設も進んでいる。これに対し、反市長派の市民団体は翌平成31年2月、1万4000筆の署名を添えて配備計画の是非を問う住民投票条例の制定を市議会に直接請求したが否決された。この数の多さを考えれば、署名をした人がすべて警備計画に「反対」だとは思われない。だが、左派の活動家は「駐屯地を作ると中国の攻撃対象になる」「いたずらに隣国を刺激するべきではない」「中国が攻めてくることなどあり得ない」などと主張しており、住民投票の狙いが配備撤回にあると思われても仕方がない。

 今回の市長選に出馬した新人の砥板氏は単なる保革相乗りの候補ではなかった。元八重山防衛協会の事務局長だったばかりか、前回選挙では中山市長の選挙戦を指揮する幹部だったたからだ。そのためか、砥板陣営は戦術として保守層の取り込みを狙い、「保守革新というイデオロギーを超えて」「政治信条や立場の違いを乗り越え」などとのキャッチフレーズを多用した。「陸自配備を問う住民投票」はチラシの一番最後に書かれているだけで、子育て支援や国保税の負担軽減など生活目線での公約を訴えた。砥板氏擁立で反発する左派をなだめたのは玉城デニー知事だったが、選挙期間中に石垣を訪れることはなかった。「オール沖縄」という言葉もほとんど使われなかった。

 保守派の砥板氏に何があったのかはわからないが、街頭演説では、「独善的な市政を終わらせる」と強調した。これまで市議時代の砥板氏を支持してきた地元の商店主はこう話した。

「以前から中山市長に対するライバル意識を持っていたのは事実です。国や郷土を思う気持ちは同じだったはずだから、次の機会まで待って欲しかった。結果が出た今は、砥板さんを責めるよりも、彼のような正反対の位置にいた男までも利用する『オール沖縄』の怖さを感じます」

 石垣市は今年1月末、尖閣諸島海域で海洋調査を行った。調査は東海大学海洋学部の山田吉彦教授らが市から委託を受け、大学所有の「望星丸」を使った。中国海警局の裏をかくべく調査は秘密裏に計画され、同乗した中山市長自身、直前まで身内にも計画を秘匿する徹底ぶりだったという。中国海警局の過去の動きを見ると中国への内通者がいることは、もはや常識だからだ。調査では海保の巡視船や海上自衛隊のP-3C哨戒機が警護する中、海域での漁場育成のための海洋水成分の分析などが行われた。関係者は「海警局の公船による領海侵犯が常態化する中で、行政と研究機関、海保、自衛隊がワンチームになって、我が国の主権を内外に明示した」とその意義を強調した。

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