ウクライナ侵略でいよいよ他人事ではなくなった… 沖縄・石垣市の市長選で考えた尖閣有事

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ロシアによる侵略で「国民の86%が中国を懸念」している現実

 ウクライナではロシア軍による住民への殺戮が続いている。ウクライナはクリミア半島を侵奪された2014年以前、事実上の非武装路線を採っていた。クリミアが奪われて彼らはようやくその間違いに目覚めたが間に合わなかった。米国もNATOもロシアとの全面衝突による核戦争という最悪のケースを恐れて軍事的支援ができないでいる。

 中国が核使用をちらつかせて尖閣や台湾に手を伸ばした時、果たして米国が自らの犠牲覚悟で、これを跳ねのけることができるだろうか。TBSは3月初め、JNN世論調査で、今回のロシアによる軍事侵攻が「台湾や尖閣諸島での中国の力による現状変更につながる」ことを懸念している人が86%にのぼったことを報じた。日本人の多くが、ロシアンによるウクライナ侵略が他人事ではないことを感じているということである。さらに、JNN世論調査では、米国の核兵器を共同運用する「核共有(シェアリング)」については、導入に否定的な人も含め、「議論はすべき」と答えた人は合わせて78%に達したという。ここでは、それ以上の言及は避けたいが、「持たず、作らず、持ち込ませず」に「議論もせず」を加えた“非核4原則”の非現実性を多くの人が理解するようになったと言えるかもしれない。

ナイーブな平和論ではなく世界の現実と向き合うべき時

 3月初旬の夕刻、筆者は東京・稲城市内の駅前で知人らが行った青年会議所のウクライナ支援の募金活動に立ち会った。帰宅途中の会社員らに混じって、募金する若い人たちの姿も目立った。その中に、塾の帰りと思われる小学生の女の子2人がいた。「あんまり、お金を持っていないんです」と恥ずかしそうに財布から小銭を取り出して募金し、手を振って去って行った。子どもたちは、ウクライナの子どもたちの苦しみを、我がことのように悲しみ胸を痛めているのだ。政府は犠牲者を減らすために防弾チョッキを送る方針を決めたが、日本共産党の田村智子政策委員長は3月5日の記者会見で「賛成できない」と語った。前日には「人道支援としてできることはすべてやるべきだ」と話していたのだが。

 今後、ロシアによる侵略の行く末がどうなるか見通しは立たない。だが、たとえウクライナを制圧したとしても、やがて経済的に弱体化して没落していくだろう。その時に世界の覇者となるのが、ロシアを陰で支えながら悠然と眺めていた中国である。ロシアを懲らしめるための経済制裁が“副反応”として現れる時を中国は虎視眈々と待っているに違いない。そうなると習近平の独り勝ちである。侵略は必ずしもミサイルや爆弾による先制攻撃で行われるとは限らない。南沙諸島のフィリピンの島がそうであったように、中国は相手が油断をした隙にいっきに上陸して占拠する。

 平和は「戦争反対」「戦争やめろ」と叫んでいれば保たれるほどナイーブなものではないことを今回のロシアによる侵略は教えてくれた。平和を守るということはどういうことか。思い込みや決めつけを排除して世界の現実と向き合うべき時が来たのではないだろうか。

椎谷哲夫(しいたに・てつお)
1955年、宮崎県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒、同大学院社会科学研究科修士課程修了。元中日新聞社(中日新聞・東京新聞)編集委員。警視庁、宮内庁、警察庁、海上保安庁などを担当し販売局次長、関連会社役員などを歴任。著書は『皇室入門』(幻冬舎新書)、『夫婦別姓に隠された不都合な真実』(明成社)など。

デイリー新潮編集部

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