ウクライナを攻撃するロシア「ミサイル」日本の技術が使われている? 元公安警察官の証言

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赤外線感知器も要求

「VOAに関する情報や赤外線感知技術に関する情報を要求するようになったのです。それらの情報の見返りとして、ウラジミルは主任研究員に現金数万円を渡しています」

 ウラジミルの要求はさらにエスカレートした。

「VOAの現物を持ってきて欲しいと言い出したそうです。これまでロシアのスパイ事件では、周辺技術を入手するだけでした。現物を要求した例は聞いたことがありません」

 2005年3月、研究員はニコンの研究所である「コアテクノロジーセンター」からVOAを持ち出し、飲食店でウラジミルに渡した。

「この頃には、公安部外事1課がウラジミルがニコンの社員に頻繁に会っているとの情報をキャッチしていました。ウラジミルは、研究員に対して、赤外線探知器を持ってきて欲しいと再三に渡って要求していたのです。このままでは最先端の機密情報がロシアの手に渡ってしまうと思い、2005年10月、情報漏洩事件として摘発しました。ウラジミルは最終的に研究員と十数回接触し、現金200万円以上渡していました」

 研究員は2006年3月、ニコンを退社した。2006年7月、公安部はウラジミルに出頭要請したが、8月2日に帰国した。8月10日、主任研究員とウラジミルを窃盗容疑で書類送検した。警察庁は外務省を通じ、ウラジミルの再入国拒否の手続きを取ったという。

「VOAは、ロシアで軍事転用された可能性が強いとみています。今、ウクライナを攻撃しているロシアのミサイルにも使われているのかもしれません」

勝丸円覚
1990年代半ばに警視庁に入庁。2000年代初めに公安に配属されてから公安・外事畑を歩む。数年間外国の日本大使館にも勤務した経験を持ち数年前に退職。現在はセキュリティコンサルタントとして国内外で活躍中。「元公安警察 勝丸事務所のHP」https://katsumaru-office.tokyo/

デイリー新潮編集部

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