「親米大統領」誕生でも韓国は「離米従中」 李朝末期にどんどん似てきた

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 3月9日投開票の韓国大統領選で、野党第1党で保守「国民の力」の尹錫悦(ユン・ソンニョル)前検事総長が当選した。焦点は親米路線に戻るかだ。韓国観察者の鈴置高史氏は「容易ではない」と見切ったうえ「韓国は李朝末の混乱期にどんどん似てきた」と言う。

Quadが試金石

 米国側に戻るか、を計る最大のポイントはQuadに参加するかである。Quadは対中包囲を念頭に置いた「日米豪印」の4カ国の枠組みだ。中国に気兼ねする文在寅(ムン・ジェイン)政権は、米国に誘われてもQuadに入らなかった。

 少し前まで米国は「日米韓」を土台にアジアの安全保障の枠組みを作っていたことを考えると、隔世の感がある。当然、米国は韓国が保守政権に回帰したのを機にQuad参加を表明すると期待している。

 ところが選挙期間中、親米を唱える尹錫悦氏はQuadに関し腰が引けた発言に終始した。「Quad傘下のワクチンなどのワーキング・グループに加わりつつ、追って正式な加盟を模索する」との発言に留めた。「参加する」とは絶対に言わなかったのだ。明確に公約すれば中国から威嚇されるのは確実で、票が逃げると計算したのだろう。その程度の覚悟だから、大統領に就任してもQuad参加に動く可能性は低い。

「米国回帰」を計るもう1つのポイントが核共有政策だ。米国の戦域核兵器の使用について同盟国にも関与させる仕組みである。NATOではドイツなどが導入しており、日本でも2月27日に安倍晋三元首相がフジテレビの番組で「議論すべきだ」と語り、注目を集めた。

「核共有」を導入しても同盟国が核を自由に使えるわけではない。「二重鍵方式」とも呼ばれ、同盟国だけでなく米国も使用を拒否する権利を持つからだ。しかし北朝鮮の核開発が着々と進む中、何らかの形で核に関与したいと考えた韓国の保守は、米国に核共有を要求すべきだとの声を強めている。「核共有」を踏み台に「自前の核武装」を実現しようとの狙いもあるのだろう。

核共有にも及び腰

 尹錫悦氏は2021年9月22日、大統領選挙に名乗りをあげた際、「有事の際、戦術核の再配置と核共有を米国に強力に要求する」と公約した。

 積極的に聞こえるが、よく考えれば腰の入らない発言だった。「有事の際」と条件を付けてしまえば「緊張が高まらない限り核共有には動かない」と宣言したのと同様だからだ。それでは北朝鮮の核開発への威嚇効果は期待しにくい。

 2022年2月7日、発言はさらに後退した。中央日報の「尹悦錫『単一化、互いに信頼すれば10分以内に終われる[単独インタビュー]」(2月9日、韓国語版)の「一問一答」部分から尹錫悦氏の「核共有」に関する発言を翻訳する。

・北朝鮮の核をそのままにして、我が方も核武装するとか核共有を言いつつ核軍縮しようと主張するのはとても危険だ。北朝鮮が実際に非核化する可能性があろうがなかろうが、強力な経済制裁をして「核を持つようになれば結局、経済は破綻する」ということを示すのが重要だ。

「核共有は危険だ」と、考え方を180度変えたのである。この腰くだけも中国の圧力による可能性が高い。アジアでの核共有の実現性は薄いと見られていた。しかし最近、米国で「日本、韓国、豪州と核共有することで米国の核の傘への信頼感を高め、同盟を強固にしよう」との意見が語られ始めた。中国も神経を尖らせていよう。

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