中田翔、清宮幸太郎…体重の急激な変化に“専門家”が警鐘! 「高校球児は感化されないように注意すべき」

スポーツ 野球

  • ブックマーク

Advertisement

「より故障のリスクは高くなる」

 プロ球団のメディカルスタッフを務めた経験のあるスポーツドクターも、急激な体重増加の“危険性”をこう指摘する。

「体重が増えれば、当然それだけ体にかかる負担も大きくなります。特に走り始める瞬間と、走っていてブレーキをかける時に下半身に大きな負荷がかかる。具体的な部位としては、太ももの裏、ふくらはぎの筋肉やアキレス腱などです。徐々に体重を増やしていったのではなく、短期間で増やしたとなれば、より故障のリスクは高くなります。自主トレやキャンプでの練習では大丈夫でも、試合でとっさにスタートを切ったり、ブレーキをかけたりする動きで怪我をするということもあり得る話だと思いますね」

 メディアで報じられているのは、単純な体重だけで細かい数字までは分からないだけに断言はできないが、短期間の極度な増量も減量もリスクがあることは間違いないだろう。また、前出のトレーナーは報じられている「1日9合の米」や「1カ月間で20杯以上の家系ラーメン」という食事の内容にも問題があるという。前出のスポーツドクターは言う。

「もちろん他にも、いろんなものを食べていると思いますが、筋肉を作るのは白米やラーメンなど炭水化物ではなく、タンパク質です。自主トレ期間にはランニングメニューが多くてエネルギー消費が多いので、それを補うために普段よりも炭水化物を多めにとるというのは理解できます」

 と、一定の理解を示したうえで、こう続ける。

「極端な食事のとり方をしないように」

「ですが、それだけで体重を増やそうというアプローチは、筋肉量を増やすのには効果的ではありません。分かりやすさやインパクトのために『米9合』や『ラーメン20杯』という部分が切り取られて報道されているのだとは思いますが、高校球児をはじめアマチュア選手は体重を増やしたいからといって、これに感化されて、極端な食事のとり方をしないように気をつけてもらいたいです」

 プロ選手の行動が、ジュニア世代の選手に与える影響は非常に大きいことは間違いない。それはプレーだけでなく、トレーニング方法や利用している用具、そして食事も同様である。トレーナーの語るようにインパクトのために切り取られている部分は当然あるかもしれないが、ジュニア世代に誤った危険性の高いアプローチが広まらないためにも、科学的に効果のあるやり方がよりフォーカスされる必要があるだろう。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮編集部

前へ 1 2 次へ

[2/2ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。