ウクライナ侵攻で世界各国の諜報機関がSNSに齧り付いている…「こたつCIA」の驚くべき実情

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可視化された戦争

 しかし実際には、「核戦争うんぬん」は俗説だとされているようだ。

「核戦争を想定して開発されたという言説は嘘でも、インターネットが戦争や災害に強いことは間違いありません。ネットは一部が寸断されても、残りの部分で通信が続けられます。アメリカ3大ネットワークのCBSはインターネットを使って、キエフの自宅シェルターに隠れている女性にインタビューを行いました。まさにウクライナの現状が、ネットの強さを証明しているのです」(前出の記者)

 1991年に起きた湾岸戦争では、CNNがイラクの首都バグダットの空襲を生中継し、世界に衝撃を与えた。しかし今は、スマートフォンさえあれば、誰もがCNN並みの情報配信能力を持っている。

「今回はウクライナ市民の多くがスマホを活用し、戦闘の様子やロシア軍の動きを投稿しているのです。これほど戦争が可視化される時代が来たのかと専門家は衝撃を受けています。ただ、陸戦だからという点は注意が必要でしょう。戦闘機や潜水艦での戦闘は依然として可視化は難しいものがあります。今回の戦争は主に陸上で起きているからこそ、ネットによって丸裸にされているのです」(前出の自衛隊関係者)

 軍事作戦の全てが一般国民に記録されてしまう時代になったのかと言えば、さすがに、それは違うようだ。

「こたつCIA」の実力

 ロシア軍の状態についても、インターネット上の情報から推測することができる。

 例えば、ウクライナ人がガス欠で止まったロシア軍の戦車の周囲にいる兵士に話しかけた動画が、今世界中に拡散。やはり3大ネットワークのABCがニュース番組で動画を放送した。

「道路で立ち往生している戦車を前に、ウクライナ人がロシア兵士に『自分たちの車で戦車をロシアまで牽引してあげようか』と冗談を言うと、兵士たちは笑っていました。専門家はロシア軍の士気がそれほど高くないことと、補給がうまくいっていない可能性を読み取るわけです」(同・自衛隊関係者)

 インターネットで検索した情報を元に、極めて安易に書かれたネット記事を「こたつ記事」と呼ぶことがある。

 現場での取材や調査もせず「コタツに入ったままでも書ける」記事という意味だが、今回のウクライナ侵攻では「こたつCIA」、「こたつ参謀本部」という様相を呈しているという。

 ロシアのフェイクニュースをウクライナ市民がSNSで指摘し、その正しさが証明されたこともあった。

「ロシア国防省は2月15日、ウクライナ国境での演習を終えた部隊の一部が撤退する様子だとする映像を公開しました。これを好感し、同じ日のアメリカ株式市況は反発して始まりました。ところが、ウクライナ市民が『ロシア軍はむしろ近づいている』とSNSに投稿したことで、ロシアの嘘が明らかになったのです」(同・自衛隊関係者)

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