中国はプーチンにしてやられた… 「ロシア寄り」の姿勢がアダとなる

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不動産市場の象徴

 改革開放路線からの転換で急減速している中国経済を象徴しているのは不動産市場だ。

 中国政府の締め付けのせいで昨年後半に中国恒大集団が経営危機に陥ったことを契機にマンションの買い控えが急速に拡大、同業他社にも資金繰り不安が波及している。

 上場不動産開発企業の5割弱が赤字に転落すると見込まれる中、特に深刻なのは中小都市だ。マンション価格は下落を続け、不動産開発企業は次々と撤退している。「不動産市場のバブルがはじける過程にある」との悲鳴が聞こえてくる。

 多くの銀行は2月に入り、冷え込んだ市場のてこ入れを図るために住宅ローン金利を引き下げているが、不動産開発企業が大量に発行している社債への不安は収まらない。

 中国政府の指導が可能な人民元債市場は落ち着きを取り戻しているが、米ドル債市場は混乱したままだ。中国の不動産市場の安定の鍵を握っているのは海外マネーなのだが、ウクライナ情勢が暗い影を落としている。

 欧米諸国が2月26日、SWIFTと呼ばれる国際決済網からロシアの大手銀行などを排除することを決定したことで世界の投資家は中国リスクを意識するようになっている。金融制裁を主導した米国政府は「金融制裁をロシアが回避できるよう支援すれば、中国は大きなダメージを被る」と牽制した。米国などが発動する金融制裁はロシアのみならず、ロシアの制裁破りに加担する中国の銀行や企業にも適用され、国際金融システムから排除されるという深刻なペナルティーが科されてしまうからだ。

 中国政府の動静が注目されていたが、「習近平国家主席が欧米の制裁についてロシアを支援するよう指示した」ことがわかった(2月28日付読売新聞)。これが事実だとすれば、不動産業界が海外マネーを調達できなくなってしまう可能性が生ずる。資金難となった中国経済のバブル崩壊が現実のものとなり、秋の党大会は大荒れになってしまうのではないだろうか。

藤和彦
経済産業研究所コンサルティングフェロー。経歴は1960年名古屋生まれ、1984年通商産業省(現・経済産業省)入省、2003年から内閣官房に出向(内閣情報調査室内閣情報分析官)。

デイリー新潮編集部

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