【カムカム】モモケン親子の精神的和解で見えてきた最終回までの道筋

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 大人気作となったNHK連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」も残すところ6週。一貫して描いてきた大きなテーマの1つが浮き彫りになった。ゴールまでの道筋もぼんやりと見えてきた。

 この物語が当初から描いてきた大きなテーマの1つを浮かび上がらせたのは伴虚無蔵(松重豊)だった。1984年という設定の第82話でのことだ。

 先代のモモケンこと桃山剣之介(以下先代、尾上菊之助)が主演した1964年の映画「棗黍之丞 妖術七変化~隠れ里の決闘」がリメイクされることになった。主演は息子の2代目モモケン(以下モモケン、同)。前作の相手役も桃山団五郎を名乗っていた当時のモモケンが務めるはずだった。

 前作当時、モモケン親子は仲違いしていたものの、共演させることで仲直りさせ、映画も当てるのが、映画会社・条映の目論見だった。現在は3代目ヒロイン・ひなた(川栄李奈)も同社に勤めている。

 だが、実際に前作で相手役になったのは虚無蔵。その理由を説明する虚無蔵の言葉で大きなテーマの1つが読み解けた。

「(先代モモケンが)映画を見限った団五郎は映画には出さんと」(虚無蔵)

 この物語は先人や古いものを忘れてはならないと静かに訴え続けてきた。それが明確化された。だから題材に選ばれた5つのものは全て主役の座から降りたものだ。「ラジオ英語講座」「あんこ」「野球」「ジャズ」「時代劇」。

 そして虚無蔵は古い人間の象徴なのだろう。とっつきにくいが、古い人の良い点が詰め込まれている。松重は脚本を書いている藤本有紀さん(54)の朝ドラの前作「ちりとてちん」(2007年後期)にも出演しており、信頼されている。

 また藤本さんが最も忘却は許されないと考えたのが、戦争による先人の辛苦なのは間違いない。だからハートフルコメディでありながら、初代ヒロイン・安子(上白石萌音)に過酷なまでの試練を課した。先人たちの舐めた辛酸と努力が並大抵ではなかったことをあらためて知らしめた。

 この物語は布石が多く、先が読めないが、後出しジャンケンのような展開は一切なく、極めてフェア。最初からキャッチフレーズの1つとして「あなたがいたから私です」と謳っていた。先人や古いものを考えさせるための物語でもあると予告していた。

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