ウクライナ侵攻でロシア発「石油危機」の懸念 プーチンに残されたカードは1枚のみ
石油危機の懸念
実力行使に出たロシアにとって、残されたカードはグルジアモデルしかない。
2008年7月にロシアがグルジア(現ジョージア)と戦争した際、親ロシア系住民が多数を占めるグルジアのアブハジアと南オセチアの独立を承認した。ロシアの決定に欧米諸国は反発したものの、その後事態が鎮静化したことで、現在に至っている。いわゆる「凍結された紛争」である。ロシアは「このやり方をウクライナの東部地域に適用すれば事態は安定化する」と判断した可能性がある。紛争状態が続いていればグルジアと同様、ウクライナのNATO加盟を阻止できるというメリットもある。
ロシアの軍事行動に対する欧米諸国からの経済制裁についてプーチン大統領は「準備ができている」とした上で「ロシアは国際経済から排除されることを望んでいない」と述べた。欧米側もエネルギーを標的にした制裁を実施していないが、欧州をはじめとする世界のエネルギー供給が甚大な打撃を受けるリスクが高まっている。
ドイツのショルツ首相が22日、ロシアとの新しいガスパイプライン(ノルドストリーム2)の認可手続きを停止すると発表し、ロシア産天然ガスの欧州への輸出に支障が出る事態となりつつあるが、筆者が懸念しているのはロシア産原油の方だ。
ロシアから欧州には日量300万バレルの原油が輸出されているが、ウクライナ侵攻直後から、欧米の金融機関がロシア産原油購入の信用状の発行を躊躇し始めていることから、原油タンカーがロシアの積み出し港を敬遠する動きが起きている。
ロシアのウクライナ侵攻で原油価格は一時1バレル=100ドル超えとなったが、「ロシア産原油の輸出に支障が生じることは確実であり、原油価格は1バレル=130ドルにまで高騰する可能性がある」との予測が出ている。
米バイデン大統領は24日「原油の戦略備蓄の共同放出について他国と協力している」と述べたが、原油価格を抑制できるかどうかは定かではない。
50年ぶりの石油危機がロシア発で起きてしまうのだろうか。
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