子をしつける親の「懲戒権」が民法から削除へ 120年以上経って改正…背景に児童虐待が

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 聞けば法律制定から百二十余年経って、ついに条文から削られるのだという。法務大臣の諮問機関・法制審議会が、親の子に対する「懲戒権」(民法822条)を削除する内容の答申案をまとめたのは2月1日のこと。それにしても耳慣れない言葉である。

 家族法(親族・相続法)に詳しい弁護士が言う。

「現在、懲戒権という言葉が法律の現場で使われることはほとんどありません。私も答申案のニュースを知って“そういえば民法に条文があったな”と思いだしたほどです」

 そこで、法務省民事局に聞くと、

「懲戒権とは、読んで字のごとく親が子をしつける権利のことです。その発祥は明治時代に公布された民法でした。もともと日本の民法は、お雇い外国人のボアソナード博士らによってフランス法を参考に作られたのですが、当初の法案があまりに親子関係について進歩的だったので“民法出でて忠孝亡ぶ”などと大論争になったものの懲戒権は残されたのです」

 その「懲戒権」は戦後も生き残った。日本の民法はGHQによって民主的な内容へと大きく変えられたが、やはり子育てのためにはしつけが必要であるとして懲戒権の規定が消えることはなかったのだ。

背景に児童虐待問題

 民事局の担当者が続ける。

「その背景に、近年社会問題化している児童虐待があることは否定できません。実際、虐待事件の中には親が暴力を正当化するために懲戒権を主張する事例もあったのです。暴力的なイメージが連想され、言葉が濫用されるリスクはずっとあった。いっぽう、しつけの正当性を法で定めることも必要です。そこでまず、児童虐待防止法が作られ、2011年に民法820条を改正し、親が子に行う監護・教育について“子の利益のために”という言葉が挿入されました。ここで、しつけの目的を明確にした上で、今回、懲戒という言葉を削除し、体罰禁止を明記する旨の答申が出されるというわけです」

 歴史が長い分だけ、時間をかけた法改正となるわけだ。

 明治以来の大改正案は早ければ今国会に上程されるという。

週刊新潮 2022年2月17日号掲載