「ミステリと言う勿れ」5話に登場で話題…『自省録』の「ドキッとして肝に銘じようと思う」フレーズは?
もともとベストセラー
ドラマ効果で、岩波文庫版の『自省録』は通常の倍以上の売れ行きだという。
「特に第5話が放送された後、Amazonさんや楽天BOOKSさんのランキングでも総合1位まで急上昇しました。特別帯付きの文庫は当初1万部を用意していましたが、既に完売しました。急遽4万部の追加重版を進めております。ドラマでは今後も『自省録』が登場する予定とのことですので、更なる反響があるのではないかと期待しておりますし、手応えも感じています」(同・担当者)
もともと『自省録』は、多くの人に読まれてきたベストセラーだったという。岩波文庫版の奥付を見ると、初版は1956年。2007年2月の改版を経て、2021年6月には25刷。累計で45万部だという。
「岩波文庫の中でも常に売上の上位に位置しています。ドラマの主人公・久能整くんのセリフにもありましたが、『ドキッとして肝に銘じようと思う』フレーズが詰まりに詰まっていて、迷った時、悩んだ時、生きづらさを感じた時に、手に取りたくなる、開いてみたくなる本ではないでしょうか」(同・担当者)
『自省録』に取っ付きにくいイメージを持っている人も少なくないだろうが、内容はメモ書きのような寄せ集めであり、実のところかなり読みやすい。
実は読みやすい内容
例えば、ドラマの中で暗号として登場した15ページを岩波文庫版で見てみると、4つの短い文章が紹介されており、11番から14番までの番号が付けられている。その中から12番をご紹介しよう。
《プラトーン学派のアレクサンドロスからは、「私は暇がない」ということをしげしげと、必要もないのに人にいったり手紙に書いたりせぬこと。また緊急な用事を口実に、対隣人関係のもたらす義務を絶えず避けぬこと。》
確かに「忙しい自慢」のメールは、読んでいて気持ちのいいものではない。町内会の大掃除を「身内に不幸がありまして」などと嘘の口実をつくって常に断っていたら、必ず顰蹙を買うだろう。
今の時代でも充分に通用する内容だ。やはりドラマに出た103ページの29番をご紹介しよう。
《君の肉体がこの人生にへこたれないのに、魂のほうが先にへこたれるとは恥ずかしいことだ。》
学校や職場でミスをしてしまい、落ち込んだ時に読んだりすると、かなり励まされるのではないだろうか。
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