ヤクルト・高津監督が語る「ノムさん」の教え 若手育成の極意と継承した「考える野球」

スポーツ 野球

  • ブックマーク

ノムさんからは「最下位だから好きなように」と激励

〈下馬評を覆す2年連続最下位からのリーグ優勝。全6試合中5試合が1点差という大接戦を勝ち抜いての日本シリーズ制覇。見事にツバメ軍団を“勝てるチーム”へと生まれ変わらせた高津監督は、日本一に輝いた直後のインタビューでこう語っている。

「応援してくれたファンの皆さん、選手諸君、スタッフに心から感謝、感謝、感謝です」

 実は、ヤクルトが西武ライオンズを下し、高津監督が胴上げ投手となった1993年の日本シリーズ第7戦の試合後、野村克也監督(当時)が発したのが「感謝、感謝、感謝」だった。その言葉を引用した高津監督は、一昨年2月に亡くなった恩師の教えが自身の“野球人生の原点”にあると語る。〉

 野村監督からは、一昨年1月のスワローズOB会で「頭を使え。頭を使えば勝てる。最下位なんだから好きなように思いっ切りやりなさい」と激励されました。昨季はこの言葉に後押しされながら、投手や野手の起用法を練り、試合中には思い切った作戦を立て、常識に捉われずトライする意識で臨みましたね。

 思えば、91年のヤクルト入団以降、僕は野村監督から8年間にわたって数えきれないほど多くのことを教わってきました。野村監督の“考える野球”が僕の原点なのは間違いありません。現役時代に野村監督の言葉を書き留めた4冊のノートは、折に触れて読み返しています。その内容をいまの時代に合わせて絶えず見直し、アレンジしていく。やはり“考える”ことが基本にあります。とはいえ、僕にとっては、のびのびと野球をやらせてもらったことへの感謝の方が大きいのも事実です。

 野村監督といえば“データ重視のID野球”というイメージが強いので、選手に対して事細かく指示を飛ばしていると思われるかもしれません。でも、実際はそうではないんですね。むしろ、選手を信頼して、じっと見守るのが野村監督のスタイル。僕がマウンドに立ったら、1球ごとにサインを出したりはせず、大半のことをバッテリーに任せてくれた。僕もそうした姿勢を継承していきたいと考えています。

「失敗する前から反省するな」

 もちろん、チーム内のルールや作戦は守ってもらうけれど、グラウンドでは生き生きとプレーしてほしい。たとえば、打者が三振を恐れて当てにいったり、投手が打たれることを怖がって腕を振れなくなったら勝てる試合も勝てません。失敗を不安に感じていては納得のいくプレーは望めない。だからこそ、選手には「失敗する前から反省するな」と伝えています。

〈こうした高津監督の思いが、あの“名フレーズ”を生む。昨年9月7日、大きく負け越していた首位・阪神との大一番を前に、高津監督は選手たちに檄を飛ばした。「絶対大丈夫!」と。指揮官の期待に応え、チームはこの月に13試合負けなしの球団新記録を樹立することになる。

 一方で、“ツバメ軍団”躍進の原動力となったのは、若手の台頭に他ならない。高卒2年目の奥川恭伸はチーム最多の9勝をマークし、24歳の高橋奎二は日本シリーズでプロ初完封勝利を飾った。野手では21歳にして“不動の4番”となった村上宗隆が39本塁打を放ってホームラン王に輝き、社会人から入団して4年目の塩見泰隆は初のベストナインに選出。2軍監督時代から若手育成に尽力してきた高津監督の手腕が光った。〉

次ページ:若手育成の極意

前へ 1 2 3 4 次へ

[2/4ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。