小池栄子で大河に登場した「北条政子」は5回目 40年前の「草燃える」にもあったコメディ的要素

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 NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」が話題となっている。まだ序盤なので、視聴率については確定的なことは言えないが、少なくとも歴史好きの間ではひっきりなしに話が出るような状態だ。【安田清人/歴史書籍編集者】

御家人に指令をくだす御台所様にしか

 1960年代後半生まれの筆者は、小学生のときから歴史好きで、その一因が大河ドラマだった。毎週放送される歴史劇を通じて、壮大な物語の世界に魅せられてしまったのだ。特に印象深く残っている作品が、1979年に放送された「草燃える」である。今年の「鎌倉殿――」と同じく、源平合戦から鎌倉時代の初期、承久の乱までを描く作品だ。

 主役は、宿敵平家を倒して征夷大将軍となり、鎌倉幕府を築き上げる源頼朝。そしてその妻の北条政子が、もう一人の主人公に位置づけられていた。頼朝を演じたのは石坂浩二、政子を演じたのは岩下志麻だった。

 子ども時代のすり込みというのは恐ろしいもので、40年以上たったいまでも頼朝と言えば石坂浩二の顔がすぐに浮かび、政子といえば岩下志麻しか考えられない。いや、むしろTVや映画で岩下志麻を見ると、「あ、政子だ」と思ってしまうほどだ。「極道の妻たち」(第1作)で主役を張り、「あほんだら、撃てるもんなら撃ってみい!」と見事な啖呵をきる志麻姐さんの姿を見ても、御家人に指令をくだす御台所様にしか見えなかった。

 それくらい、岩下演じる政子は印象深かった。頼朝に寄り添いつつ、やがて幕府と北条家を守るために強く賢くなってゆく政子。そのためには自らの子どもさえも犠牲にせざるを得なかった悲劇的な政子。そして物語は、晩年の政子が平家物語の哀調のなかで、言い知れぬ無常観に包まれる場面でエンディングを迎える。

 そのすべてを演じきった岩下の姿は、いまだに最高の政子像として筆者の記憶に残っている。

実際以上に大人の雰囲気たっぷりの夫婦

 これまで、NHK大河ドラマに北条政子が登場したのは5回。1966年の「源義経」は大塚道子が政子を演じた。しかし、この作品は主人公の義経を演じる尾上菊之助(現・菊五郎)とその愛妾の静を演じる藤純子(現・富司純子)という、後に実際に夫婦となる美形コンビが話題となったため、政子の評判はあまり聞こえてこない。

 次は1972年の「新・平家物語」の栗原小巻。この作品は平清盛が主人公だったが、物語の後半は頼朝と政子の結婚から始まるというペース配分だったので、源平合戦へとなだれ込んだ後に政子もそれなりの存在感を示したようだが、年間を通してヒロインだったわけではないというのが弱みか。栗原小巻といえば、その6年後の1978年の大河ドラマ「黄金の日日」でのヒロイン美緒のイメージがあまりに強く、割を食って政子の印象は薄い。

 1979年の「草燃える」を挟み、しばらく源平の時代が取り上げられる機会は遠のき、政子も2005年の「義経」が久しぶりの登場となる。財前直見が政子で、夫の頼朝は中井貴一だった。主役の義経と静は、滝沢秀明と石原さとみという当時売り出し中の美少年・美少女コンビだったので、政子と頼朝は実際以上に大人の雰囲気たっぷりの夫婦に見えた。筆者はこちらの大人組に世代が近いのでシンパシーを感じたが、若い義経と静がどうにもまぶしくて、「オレもおじさんになったな」と少々さみしい気分も感じていた。

 2012年の「平清盛」では、杏が政子を、岡田将生が物語の語り部でもある頼朝を演じた。この作品は、清盛の生涯を描きつつ、時折り後年の頼朝や政子の登場場面が挿入され、清盛一代記をナビゲートするという趣向だった。政子も狂言回し的な役割を担ったため、単独での評価は難しいが、長身の杏が演じていたこともあり、男勝りで活発という政子のオフィシャルイメージはきっちり押さえていたように思う。

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