北京五輪 ピークを過ぎた小平奈緒の戦い方に注目 人生そのものが見える5人の日本人選手

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優勝候補が揃う五輪

 北京冬季五輪の開幕が2月4日に迫って来た。世界中がオミクロン株とさらにその変異株の蔓延に警戒を余儀なくされる中、厳しい防疫体制を敷いて実施に向かっている。選手にとっても、いつ陽性になるかわからない、そうなれば出場できなくなる……。いつもの五輪とは別の緊張感と不安を抱えての難しい大会になるだろう。【小林信也/スポーツライター】

 日本選手も大会が次々と中止になり、予定していた合宿や海外遠征もできない状態が続いた。この1年、大会は復活したとはいえ、コロナウイルスに感染したアスリートも少なくない。そんな中、夢への挑戦をあきらめなかった124人が北京五輪の舞台に臨む。

 北京五輪では、過去最多だった前回平昌五輪の13個を上回るメダル獲得数が期待されている。金メダル候補も複数いる。3連覇を狙うフィギュア男子の羽生結弦、W杯で抜群の成績を残しているジャンプの小林陵侑、同じくW杯で世界をリードし続けるスピードスケートの髙木美帆ら、これだけ優勝候補が揃っている冬季五輪は史上初めてと言ってもいいだろう。

 一方で、私が注目しているのは、メダル争いだけでなく、アスリートたちの人生そのものが競技を通して見えてくる、様々な生き様を模索するアスリートたちの挑戦だ。

《卵子凍結》を選択

 スノーボードのパラレル大回転女子に出場する竹内智香は、2014ソチ五輪のこの種目で銀メダルを獲得し、広く知られる存在となった。その後、まだ理解も関心も低いパラレル大回転の普及振興を目指し、自ら広報の先頭に立つ役を買って出た。34歳で出場した平昌五輪では5位、自他ともにそれが最後のオリンピックになると考えていた。ところが、約2年半の休養期間を経てもパラレル大回転への思いが断ち切れず、北京五輪への挑戦を決意する。その時、竹内が最も葛藤したのは、「競技を続けたい、でも子どもを産むこともあきらめたくない」という、女性アスリートが直面する課題だった。

 その葛藤と決断、そして行動を竹内はテレビで公表し、ドキュメンタリーとしても報道されている。竹内は、海外の選手仲間から聞かされた《卵子凍結》を選択したのだ。2009年に卵巣手術を受けた経験のある竹内は、健康な卵子を凍結保存し、将来子どもを持つ可能性を確保した上で再びオリンピックに挑戦する「二者択一」でなく「両方ともあきらめない」生き方を選んだ。

 女子のパラレル大回転は、2月8日(火)15時30分から1回戦が始まる。舞台は雲頂スノーパークP&Xスタジアム。対戦する2人が斜面に設定されたふたつのコースを並行して滑り順位を競う。見た目にも勝負がはっきり分かるから、スリリングで手に汗握る緊張感たっぷりの種目だ。勝った方が準々決勝に進み、同様に準決勝、決勝と戦いが続く。

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