韓国は猿芝居外交のあげく四面楚歌に… 「文在寅」退任でも日韓関係は修復せず

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 その場しのぎの外交に終始した文在寅(ムン・ジェイン)政権の5年間。韓国はすっかり四面楚歌に陥った。次期政権がそこから脱するのは困難と韓国観察者の鈴置高史氏は見る。

核・ICBM実験を再開へ

鈴置:左派系紙、ハンギョレが文在寅外交に引導を渡しました。「朝鮮半島和平プロセス、水泡に帰すか…文大統領にも『反転カード』なし」(1月21日、日本語版)です。以下、前文です。

・北朝鮮が[1月]20日に核実験と大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射を再開する可能性を示唆したことについて、大統領府はひとまず状況を「綿密に検討している」との慎重な反応を示している。
・しかし、文在寅政権の成果として掲げてきた「朝鮮半島平和プロセス」が水泡に帰すのではないかと懸念する雰囲気も感じられる。

 「朝鮮半島平和プロセス」とは文在寅政権の掲げた対北基本戦略で、韓国のみならず周辺国が北朝鮮に融和的に接することで核問題などを解決しよう、との構想です。

 それが「水泡に帰す」――「文在寅政権の対北政策が完全に失敗に終わった」というのですから、ただ事ではありません。それも書いたのが政府系紙と揶揄されるハンギョレなのです。左派のショックが窺えます。

 2018年6月の米朝首脳会談以来、北朝鮮は核・ICBMの実験はしなかった。それらが再開されれば、北朝鮮と良好な関係を作ることで緊張を緩和する、という歴代左派政権のウリがまやかしだったことが露呈してしまうのです。

 ことに今、大統領選挙を1か月半後の3月に控えています。いずれの実験が再開されたら、されなくとも示唆だけで、保守派の政権獲得の追い風になります。左派は「北朝鮮は我々を潰す気か」と大いに焦ったのです。

ウクライナで手一杯の米国

――しかし、核とICBMの実験が中断されたのは、北朝鮮と首脳会談を開いたトランプ(Donald Trump)政権のおかげでしょう?

鈴置:そうなのですが韓国では、文在寅大統領が仕切って米朝首脳会談を実現した、と未だに信じられているのです。2017年1月に発足したトランプ政権は、先制攻撃すると北朝鮮を脅す一方、水面下で首脳会談を探りました。

 これに気付いた文在寅政権は2018年3月、青瓦台(大統領府)の鄭義溶・国家安保室長(当時)を訪朝させ、金正恩(キム・ジョンウン)委員長から直接、「核放棄と米朝対話の意思」を確認したと発表。また、「対話が続く間は追加の核・弾道ミサイル実験はしない」と北朝鮮が確約したとも公表しました。

 鄭義溶氏は返す刀で訪米し、トランプ大統領に「金正恩の意思」を示す親書を伝達。トランプ大統領は直ちに鄭義溶氏に記者会見させて、米国の米朝首脳会談受諾の意思を表明しました。

 米大統領の首脳会談を第三国が、それもホワイトハウスの車寄せで発表するという異例の事態でした。その後、若干の紆余曲折はありましたが、同年6月にシンガポールで史上初の米朝首脳会談が実現したのです。

 もっとも、2019年2月のハノイでの2回目の米朝首脳会談は物別れに終わりました。金正恩委員長が核施設の完全な廃棄に応じなかったためです。J・バイデン(Joe Biden)政権も、核開発を放棄するとは思えない北朝鮮との首脳会談に否定的で、交渉はこう着状態に陥っていました。

 この間、北朝鮮は核・ミサイル実験には踏み切りませんでした。再開すれば、2017年当時のように、米国から軍事的な圧迫を受ける可能性が高いと判断したのでしょう。

 1月20日に両実験の再開を示唆したのは、ウクライナ問題でロシアと厳しく対立した以上、朝鮮半島では動きがとれないはず、と米国の足元を見た可能性が高い。今なら朝鮮半島に軍事的な圧力を割く余力のない米国は北朝鮮の脅しに屈し、対話に出てくると踏んだと思われます。

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