「東京03」メンバー3人は役者との二刀流 島田紳助との歴史的騒動をおさめた明石家さんま

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露出減の悲運と救いの手

 この騒動はSNSでは話題になったが、メディアで扱ったのは週刊誌と夕刊紙くらい。ほかのメディアはほぼ沈黙した。まるで紳助氏と吉本の威光に臆したかのようだった。

 なにしろ当時の紳助氏は人気も力も絶大。「行列のできる法律相談所」(日本テレビ)など人気番組6本のレギュラーがある一方、テレビ局への発言力も強く、吉本内でも大きな存在だった。

 一方、東京03のその後の活動には影響が見受けられた。「キングオブコント」の覇者になりながら、テレビに登場する機会がほとんど増えなかった。むしろ減ったのではないかと思えるくらい。大実力者の紳助さんが怒りを露わにした相手なので、テレビ局側が気兼ねしたように見えた。

 やさしさと男気を見せたのが明石家さんま(66)である。騒動から約1カ月が過ぎた2009年11月、司会を務める「踊る!さんま御殿!!」(日テレ)に東京03を招き、「あれはお互いの誤解やから仕方ない」と双方を庇った。さんまは紳助さんと親しかった。

 挨拶がなかった件については「邪魔臭いから来ないで欲しいぐらい」と発言し、東京03を正当化した。後輩の面倒見が良いことで知られる男らしかった。

 この騒動が起きてから12年。いまだ語り継がれているのは知られている通り。昨年8月に放送されたフジの特番「FNSラフ&ミュージック~歌と笑いの祭典~」では共演者がその話題を持ち出したため、東京03も反応した。

 紳助さんが突進した場面の映像はユーチュ―ブなどに投稿されるたび、削除される。ところが、しばらくすると再び投稿される。

 飯塚は「誰があげてんだ?」とボヤき、角田は映像が投稿される弊害を嘆いた。「(騒動が)どんどん新規開拓されていく。知らなかった人に」(角田)。もっとも、半ばネタにしているくらいだから、もうシコリはないだろう。

 東京03のコントは、ひと昔前にお笑い界で大流行した「ある、あるネタ」(見過ごされがちな日常の1コマにフォーカスする)より、ずっと高度。「人間の深層心理には、こんな一面があるのではないか」という世界を描いている。

 例えば「その日までに」というコントで角田は平凡そうなサラリーマンに扮した。弟役の飯塚から「父親が危篤」という電話を受け、病院に駆け付けるが、持ち直していた。

飯塚「兄貴に電話した時は昏睡状態で、正直ダメかと思ったけど、奇跡的に回復して。ホント、すげー生命力だよな、オヤジ。容体も安定して今、おにぎりを食べてるよ。ホントに良かった」
角田「良くねえよ!」

 角田が憤慨する理由は危篤の知らせで病院に駆け付けたのが5回目だから。そのたびに会社の同僚たちに頭を下げ、仕事を途中で切り上げている。

 飯塚は「会社の人だって何も言わねぇよ」と声を荒らげるが、角田は「最初はな」と反論。角田によると、3回目には周囲の顔からやさしさが消えた。なにより、自分が職場から突然抜けても何も問題ないのが屈辱だという。

 この言葉に飯塚はあきれて、冷めた表情で「まずオマエの性格を直せ」と突き放す。客席からは大爆笑が起きる。

 3人のコントは質の高いコミカルな演劇と変わらない。脚本も演技も。役者としても引っ張りダコなのは不思議ではない。

 飯塚は21日から始まったTBS連続ドラマ「妻、小学生になる。」(金曜午後10時)に出演している。妻を失った後、脱け殻のようになってしまった主人公のサラリーマン・新島(堤真一、57)と寺カフェでよく会う中村という男を演じる。

 その高い演技力にあらためて注目である。

高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
放送コラムニスト、ジャーナリスト。1990年、スポーツニッポン新聞社入社。芸能面などを取材・執筆(放送担当)。2010年退社。週刊誌契約記者を経て、2016年、毎日新聞出版社入社。「サンデー毎日」記者、編集次長を歴任し、2019年4月に退社し独立。

デイリー新潮編集部

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