岩嵜翔は中日で復活なるか…“人的補償”の移籍先で最も飛躍した3選手

スポーツ 野球

  • ブックマーク

Advertisement

足のスペシャリストとして活躍

 一岡と同じく広島で開花したもう1人の選手が、07年オフに新井貴浩の人的補償で阪神から移籍した赤松真人だ。阪神での3年間は一軍でわずか8安打だったが、抜群のスピードが評価され、移籍1年目から3年連続で100試合以上に出場。10年にはホームラン性の打球に対してフェンスによじ登って捕球するスーパーキャッチを見せ、ゴールデングラブ賞も獲得した。

 11年以降は丸佳浩や松山竜平の台頭もあってスタメン出場の機会は減少したものの、7年連続で二桁盗塁をマークするなど、その後も足のスペシャリストとして活躍。16年オフには胃がんを患い、その後は一軍の戦力となることはできなかったが、そのスピード溢れるプレーは広島のチームカラーにもマッチしており、成績以上の印象を残した。

 一岡と赤松は期待の若手として選ばれたものだったが、ベテランとなってから移籍した選手で最も成功した例としては福地寿樹が挙げられる。広島で12年プレーした後、青木勇人とのトレードで西武に移籍し、外野のバックアップとして活躍した。

 07年オフに石井一久の人的補償としてヤクルトに入団すると、プロ15年目にして初の規定打席に到達し、打率.320をマークし、42盗塁で盗塁王にも輝く大ブレイクを果たした。翌年は打撃成績こそ落としたものの、2年連続で盗塁王を獲得。12年限りで引退したが、現役最終年も一軍で12盗塁をマークするなどそのスピードはチームの大きな武器となっていた。

中日は高校生ドラフトで1位指名

 また、近年の人的補償で移籍した選手では、竹安大知(阪神→オリックス)、酒居知史(ロッテ→楽天)、小野郁(楽天→ロッテ)などが移籍後に成績を伸ばし、チームにとって貴重な戦力となっている。元の球団に残っていたら、ここまで重宝されることはなかっただろう。

 冒頭の岩嵜に話を戻そう。岩嵜は、移籍が決まった時に「選んでいただけたことは嬉しい。(プロテクトから外れていながら)選んでもらえない方が悲しいので」と発言しているが、中日は07年の高校生ドラフトで岩嵜を1位指名して外したという経緯もあり、高く評価される球団でプレーできるというのは、間違いなく大きなプラスである。ここ数年は故障もあって少し成績を落としたとはいえ、150キロを悠に超えるストレートの勢いはまだまだ健在。この移籍をきっかけに再び大車輪の活躍を見せることも十分に期待できる。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮編集部

前へ 1 2 次へ

[2/2ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。