すかいらーくの「アルコール1杯99円」は成功だったのか

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ファミレスには「何もない」

 前述の「外食産業市場規模推移」で見ると、20年の居酒屋・ビヤホール等の売上高は6489億円まで縮小。もちろんファミレス業界も新型コロナで大打撃を受けている。不採算店の整理を進めるだけでなく、ファミレスがいち早く取り組んだのが営業時間の短縮だった。すかいらーくホールディングスは20年1~4月にかけて約150店で24時間営業を廃止、グループ560店でも深夜営業時間を短縮している。業界第2位のサイゼリヤはコストや従業員の労働環境を見直した結果、22時までの営業に変更することを明らかにしている。

 感染力が高いとされるオミクロン株の急拡大で再び行動制限が強まれば、飲食業界の倒産がさらに増えることは間違いない。ファミレスはどうすれば生き残ることができるのか。

「僕の息子なんかもそうなんですが、若い世代はファミレスを『何でもあるけど、逆に何にもない』と言うんです。彼らが外食の候補としてファミレスの名前を挙げることはなくて、『コメダがいい』とか『さわやか(=静岡のハンバーグチェーン)に行きたい』と食べたいものがはっきりしていて、具体的。仮に家族の意見が割れたとしても、その時はそれぞれが好きなものを食べられるフードコートに行くことになります。おひとり様席や2人席を増やすなど、ファミレスが既にファミリー層以外を取り込む工夫を凝らしていることをお客様に伝えて、目的来店につながる新しいファミレス像を見せていかないと厳しいでしょう」

 都内でバーを経営しているオーナーはさらに手厳しい。

「ファミレスが集客のためにちょい飲みを進めるのは理解できます。でもアルコール1杯99円は本当に意味があるのか疑問。果たしてそれで常連客がつくのか。その値段に釣られてやってくる人は、正直お客様にならないと思う。ウチみたいなバーは狭いし、安くはないし、酒だって『何でもある』わけじゃない。でも『何かがある』としたら結局はお客さん同士の会話だったり、つながりだったりするんだと思う」

 何のために何を食べて何を飲むのか――。コロナ禍で継続的に外食の機会を奪われた私たちは知らず知らずのうちにシビアに考えるようになっているのかもしれない。

適掃夫(てき・ぱきお)
都内に住む30代サラリーマン。小学生のとき、母親の手伝いで料理に目覚め、兄の夜食を作るようになる。大学時代にはカジュアルイタリアンの厨房でアルバイト。就職後は自炊することがなかったが、3年前にアーティストとして働く妻と結婚して家事全般を担当。猛スピードで掃除洗濯をこなす様子から妻に「テキパキオ」と名付けられる。PB食品の食べ比べがスーパーの売り場徘徊が趣味。蛇口とシンクを磨くのが好きで、行きつけの飲み屋の閉店作業に加わりがち。ツイッターは「@tekipakio」

渡辺広明(わたなべ・ひろあき)
マーケティングアナリスト。株式会社ローソンに22年間勤務し、店長、スーパーバイザー、バイヤーなどを経験。現在は商品開発・営業・マーケティング・顧問・コンサル業務など幅広く活動中。フジテレビ『FNN Live News α』レギュラーコメンテーター、静岡朝日テレビ『とびっきりしずおか!』、ニッポン放送『垣花正あなたとハッピー!』レギュラーコメンテーター。

デイリー新潮編集部

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